テン・ハフには感謝しかない。マンチェスター・ユナイテッドは次こそ変われるのか。もう負け慣れた、言い訳したくない【コラム】
⚫️ビッグクラブに行っても「人生が良くなることはない」
アヤックス時代ほど、自身の戦術をチームに落とし込むことができなかったのも事実だ。ただ外から見守る我々では想像できない苦労があったのだろう。 実際、就任前と今のテン・ハフの写真を見比べると、目元のシワは濃くなり、白髪が増えている。ビッグクラブの監督に就任すると、誰もが皆一気に老け込むことは、欧州サッカーファンの中では有名な話だが、オランダ人監督もまさにその例に漏れない。 ユナイテッドの新監督候補として何度も名前が挙がったブレントフォードの指揮官トーマス・フランクは『ザ・スポーツ・エージェント・ポッドキャスト』という音声番組にて、「もしビッグクラブへのオファーを受けてそこに行くと決めたとしても、おそらく人生が良くなることはないだろう」と語ったが、正にと言うべきか。指導者にとって幸せとは何なのかを考えさせられる。 願わくば、テン・ハフがマンチェスターの地で苦悩しながらも働いた時間が、何らかの形でクラブの財産として残っていることを祈るばかりである。そうでなかったら、あまりにも報われない仕事過ぎる。 ハードワークを欠かさないオランダ人監督一人では、これまでユナイテッドが慢性的に抱える問題を全てクリアすることはできなかった。 暫定監督になってからの試合の強度の高さを見るに、最終的にテン・ハフは愛されてこそいたものの、リーダーとしての求心力が失われていたことを暗示しており、やはり限界だったのだろう。正しい行いをしようとしても、間が悪ければ全てがうまくいかないこともある。 いずれにしても監督はかわり、序列はリセットされて、選手たちの戦うモチベーションは高まっているようだ。では新指揮官はクラブをどう変えていくのか。
⚫️アモリム就任で再生する選手とは?
ポルトガル人監督は3-4-3のシステムを主軸として、相手を自陣に引き込んでから縦パスを相手のライン間に差し込んで、一気にスピードアップするダイナミックなサッカーを展開するのが得意なようだ。 しかし、このダイナミックという言葉は大雑把に蹴るという意味ではない。それを成立させるために細やかな立ち位置の調整や、練習でのオフザボールの習慣づけなどを行えるタイプだという。 傾向で言うとテン・ハフほど低い位置で繋ぐことにこだわらない。ただロングボールもきちんとデザインしている印象だ。何より縦パスやロングボールが入った後の周りの連動が素晴らしい。 幸い現状のスカッドは3-4-3適性の高い選手が多い。アントニーなど、得点力に悩んでいるウイングは、ウイングバックというポジションが生まれることで、再生する可能性もあるのではないか。エースのラッシュフォードの使い方は悩ましいが、それは誰が監督でも同じこと。若き名将がイングランド人スターをどう扱うのかが楽しみだ。 またモチベーターとしても優秀という話も心強い。