いまだ最適解が見いだせない「不登校」問題、“見守り”や“寄り添い”が行き過ぎてより残酷な結果にも…自立支援の課題
■“社会に出たら理不尽だらけ”なのに、「自由にやればいい」と気軽に言えてしまう風潮に警鐘
━━一般的な不登校や自立支援サービスは、親とは別に子に寄り添ってくれる他者がいて、対面にて改善指導を行うイメージがありました。しかし、スダチさんの場合は、家庭に介入することなく、子に存在を知られないよう徹底されています。あくまで子を導くのは親であるとする理由は? 最終的に親子関係が良くなることこそが本質的な解決と考えているからです。寄り添ってくれる他者がいたとしても、その子のそばに一生いてくれるわけではないですよね。その人がいなくなってしまった時、また元に戻るようなことがあってはいけないのです。親子の距離を置かなければならないほど関係が破綻していて、他者が必要な場合ももちろんありますが、親御さんからの声掛けによって再登校できたほうが、親子の信頼関係は明らかに深まりますよね。他者を介在させるよりも、圧倒的にメリットが多いのです。 ━━再登校できたら、もう心配はいらないのでしょうか? 不登校を解消した後も、「勉強」「友達関係」「部活」などなど、親御さんの悩みが尽きるわけではありません。その現実を知って、再登校したお子さんを持つ親御さんが相談できる場所を作ることが重要だと考えました。弊社では、支援後の親御さんのお悩み相談コミュニティの「スダチサロン」を作り、現在300名を超す参加者がいます。なかなか相談できないことまで、オープンに会話できる場所となっています。親御さん同士の交流を含め、サロンが再登校以降も最後までお子さんが学校生活を楽しく過ごすことができ、社会に巣立つ一助になるならば、価値があると考えています。 ━━最近では「学校なんて行かなくていい」という意見も取り沙汰されます。不登校問題に取り組まれ、実績を残されている中、今後、社会にどのような変化を望まれますか? 最終的には子どもたちは社会に出なければなりません。社会に出れば、競争が始まり、そこでは自由に好きなことだけやっていたら評価されないし、理不尽もたくさんあるのが現実です。それらを無視して、「好きなことだけやればいい」「自由にやればいい」という今の社会の雰囲気、教育現場の状態には大きな違和感を抱いています。親や教育者の役割は、子どもたちを自立させて社会に送り出すことです。そのためには厳しいこともある程度言わなければいけないし、できないことをできるようになるためには苦しい時期もあるということをしっかり教え、そこに向けて努力する必要も教えなければなりません。“見守り”や“寄り添い”が行き過ぎた結果、今の世の中は子どもにとってむしろ残酷な事態になっているのではないか。その風潮が変わり、未来を担っていく宝である子どもたちを育てるために、本当の意味で子どもたちがこの先人生を幸せに生きていくために必要な力を養う観点を持つ人が一人でも増えていけばいいなと思います。 PROFILE/小川 涼太郎 株式会社スダチ 代表取締役 「不登校で悩んでいる人たちを1人でも多く救いたい」という想いから、2020年4月、不登校支援事業開始。2024年6月時点での再登校人数は990名を超え、平均再登校日数は18日。再登校率は90%を超える。DMMオンラインサロンにて、支援後の親御さんお悩み相談コミュニティ【スダチサロン】主宰。