いまだ最適解が見いだせない「不登校」問題、“見守り”や“寄り添い”が行き過ぎてより残酷な結果にも…自立支援の課題
■“家庭内のルール”を決め、絶対に守らせることが不登校解決への一歩
━━登校を促したら反発され、さらに親子関係が悪化したという話もよく聞きます。 親子関係が逆転した状態で、親が子どもに注意を促せば、子どもにとっては部下がいきなり反逆してきたみたいな感覚になるので、当然、反発は起きます。とくに中高生になるとその度合いも大きくなります。しかし、そこは覚悟のうえで、耐えて、しっかりと向き合わなければなりません。ここで何より重要なのは、叱るのではなく、「〇〇のことを思って言っている」ということを、愛情持って伝えることです。そうすれば、一定の反発はあっても、3日くらいで収まります。こちらは何も間違ったことを言っていないのに、それで反発してくるのはおかしいことなのですから、その点もしっかり自覚させなければいけません。まず、登校を促す前に、家庭内のルールを決めて、生活習慣を改善すること。このルールを守らせることが、不登校解決を促します。親御さんと面談をする際も状況把握のうえ、このルール作りから始めます。 ━━家庭内のルールを決めるとは、具体的にはどのようなことをしたらいいのでしょう。 例えば、学校を休んだら家でデジタル機器は一切使わないというルールを決めます。なぜならば、学校を休むのは、次の日に学校に行けるようになるために病気やケガを治すことが一番大事なのだからという理由もきちんとお子さんに説明しておきます。このルールだけで翌日から学校に行けるようになった子はたくさんいます。さらに、このようなルールを生活全般においてもいろいろ作ります。もちろんデジタル機器の制限は細心の注意が必要ですので、十分な準備と対策を実施の上実施する必要があります。そして、一つひとつについて、できたら褒め、それを守らせます。法律や会社の規則に違反したらペナルティを受ける一般社会と同じです。 ━━生活全般ではどのようなルールが必要なのでしょうか。 不登校の子どもには昼夜逆転しているケースが多いですが、朝起きられないのは、夜、ゲームなどデジタル機器を使っているからです。スマホにはブルーライトなど脳の覚醒を導く要素がたくさんあるため、当然、寝づらくなります。さらに昼夜逆転の生活になって日光を浴びなくなると、セロトニンという幸せホルモンの分泌が正常にされなくなり、メンタルが不安定になってしまいます。ですから、朝は何時に起きるというルールを決めて、頑張って起こし、食欲がなくても飲み物だけでもいいから、家族と一緒に朝食の席につくようにする。そして夜は何時以降はデジタル機器を見ないというルールを決めて、“家族全員で”それを守る。 ━━親も徹底してそのルールを守るのですね。 親御さんが子どもの前で麻薬を打っていたら、子どもも打ちたくなるのは当たり前ですからね。親御さんも仕事でやむを得ない場合を除き、デジタル機器には触れないようにします。そうして今までできなかった行動ができるようになったら、きちんと褒める。不登校の子どもには、自己肯定率が低くなっているケースも多く見受けられます。こまめに声掛けを行い、コミュニケーションをとることで、子どもの自己肯定率が高まり、学校に行こうという気持ちにもポジティブな変化が芽生えます。不登校がどのような理由であっても、アプローチは変えず、まずはルールを守る習慣化を促していきます。 ━━ネット上には、「明日は学校に行くから」とやっと言ってくれたのに、実際、朝になると、やっぱり行けなかったという親御さんからの苦悩の声も多く上がっています。 それは、“あるある”ですね。でもこれは、脳科学的に当たり前のことなんです。私たちの脳にはホメオスタシス(恒常性)を維持する働きがプログラムされていて、一定の環境に慣れたら、そこから抜け出すときに止める反発が起きます。これまで何ヵ月も何年も行けなかった子が「行きたい」と本気で思っていても、いざ朝になったら、脳が反応してやっぱり行けなくなってしまう。これは、何回か繰り返しているうちに必ず乗り越えられますので。その間、先に申し上げたようなデジタル機器との付き合い方や生活習慣の改善、お子さんが自己肯定感を高められるよう親子のコミュニケーションを増やすなどの取り組みを継続していくことが重要なんです。