「結婚しなきゃと思わせてしまう社会の空気を、どこかで入れ替えたい」――「敏感中年」48歳、ふかわりょうの生きる道
それにしても、ずいぶんとこじらせたものだ。現在の結婚観、恋愛観に至るまでに、何があったのか。パートナーに求める条件が高すぎたのでは? 「理想が高すぎるわけではないです。そうではなくて、自分が優しさだと考えるものと、相手が考える優しさとの間に、乖離があるということなんですよ。例えば、舞台の演出家が、主演女優に強烈なダメ出しをするとします。女優が泣いているところに、演出補佐みたいな人が近づいて、『いや、大変なのはわかるよ。でもみんな、君が頑張っているのをちゃんと見てるから』ってハンカチを差し出す。女性って、そういうのを優しさだと思うでしょう。でもそれ、『ミスターあわよくば』なんです。もう、私は、みんなに警鐘を鳴らしたい。その優しさは危険だと。一見優しさに見えるハンカチに、私は嫌悪感を抱いてしまうんです。……そういう乖離がずっとあったんです」 ふかわは恋愛において、「頼られたい、必要とされたい」タイプだという。 「必要とされることに愛情を感じる。パートナーの仕事が忙しい時ほど、頼ってほしい。でも、相手は逆に迷惑をかけないように、仕事に集中して距離を置きたがることがある。そうなっちゃうと、一緒にいる意味とは?となる。何かそういうことを、恋愛経験で学んできたところがあって」 そこはお互いに誤解を解くべく話し合うことはなかったのか、と聞くと、ブンブン首を振る。 「ダメなんです。僕は、四六時中必要とされていたいタイプなんです!……だから、もうこう言わざるを得ない。言い聞かせてる。『ひとりで生きている』と」 これまでも、結婚を考えたタイミングはあった。しかし、二人の軌道が重なることはなかった。それぞれが考える優しさの定義が、どんどん離れていく。ふかわの恋愛は、いつもそれで終わりを迎えてきた。 「頼ってほしいときに頼ってくれない。優しさを履き違えて、本当の優しさに気づかない。歯車が、噛み合わなくなってしまうというか」