「結婚しなきゃと思わせてしまう社会の空気を、どこかで入れ替えたい」――「敏感中年」48歳、ふかわりょうの生きる道
みんな結婚しましょう、産みましょうという圧
独身者は、世界的に増加傾向にある。 「生涯未婚率のようなものが、統計として発表されるのは仕方ないんですが、社会的に深刻な状況として角度を付けることに違和感があります。生物として種を残すこと、生命を維持することは大事なことですが、みんな結婚しましょう、産みましょうという圧が、現在社会においては、むしろ負の作用を及ぼすのでは。それぞれの生き方がある。みんなに一つの価値観を押し付ける社会は、時代錯誤です。そういう意味でも一人が当たり前なんだという意識を持つ人が、一定数いてもいい」 結婚はあくまでも選択の一つ。一人であることを意識したい、とふかわは言う。 近年、エッセイに書き続けているテーマも、こうした考えに基づいている。 「夫婦や家族といった社会的なつながりがあったとしても、それでも人は一人。それを個々に自覚することが、むしろ円滑な社会生活に繋がると思います。断絶を望んでいるわけではなく、相手に多くを求めず、それぞれが一人でいることを尊重することが、むしろ愛情なのかなと」 「私も、今このままいけば、子どもを後世に残せない可能性もあるんですが、ただ、世の中に残せるものって、それだけがエネルギーではない。私は私なりに世の中に何か伝えられることがあればいいなあと、思っています」
ひとりで生きることを、自分に言い聞かせている部分もある
上梓したばかりのエッセイ集のタイトルは、『ひとりで生きると決めたんだ』。 まるで生涯独身宣言をしたかのように見えるが……。 「そう思われても構いません。もしも私が既に誰かと結婚し、子どももいる環境では、おそらく出会わなかった事象を綴ってきたものなので、そういう意味でも、今の居場所から見えるものを大切にしたいなっていう思いは、確実にありますね」 独身だから見える風景がある。どこか遠い目で、穏やかにそう語るふかわに、「お友達のアンガールズ田中さんがご結婚されましたよね」(言い間違い)と言うと、突然「え!?」と目を剥いた。 「結婚じゃないですよね? 交際相手が見つかったんですよね? びっくりした~。……いや、『ひとりで生きると決めたんだ』って、自分に言い聞かせている部分もあるんですよ。こう言わないと、グラついてしまう。人って、言葉が本心じゃない場合があるじゃないですか。でもそう言うことで、自分の心の杖というか、柱というか、ある種、突っ張り棒みたいなものなんですね」 「ひとりで生きると決めたんだ」。これは、本当は大好きなのに、別れなければならないとき「あなたのことはもう好きじゃない」と伝える。そういう状況に近い、とふかわは言う。 「だから、『ひとりで生きると決めたんだ( ; ; )』みたいなやつです。でも、涙目もいつかはドライになる。その時に私は、本当の乾いた景色を見るでしょう。そのあたりでどういう文章が出てきて、どんな感情で向き合うかも、その時になって見なければわからないわけで」