辻井伸行、様々なピアノと出合う楽しみ支える「調律師さんの仕事に感謝」
ピアニスト・辻井伸行が、数々の映画音楽で知られる久石譲とコラボレーションで魅了する。映画『羊と鋼の森』(橋本光二郎監督、公開中)は山崎賢人演じるピアノの調律師を目指す青年の成長物語だが、そのエンディング曲“The Dream of the Lambs”を担当した。流麗なピアノの音色を聴いていると、感動の余韻が静かに染みわたってくる。久石が作曲した曲を辻井が弾くという、まさに夢のコラボレーションが実現したわけだが、かねてより久石のファンだったという辻井に、映画音楽に挑んだ心境を聞いた。 鈴木亮平「自分の器より大きい役を演じることで成長」
調律師が主役の映画で、憧れの久石嬢さんとの初コラボ
「僕のマネージャーが以前から原作を読んでいて、調律師さんの話だと聞き、ぜひ点字に訳してもらって読もうと思っていたんです。そこへ映画の話がきて、ぜひ久石さんと組んでほしいといわれ、とてもうれしくて。原作を読み、久石さんが書いた楽譜をもらったときはすばらしい曲で感動しました」 一方では久石のほうも、辻井とのコラボを楽しみにしていたそうだ。曲は、難易度の高いものだったという。 「演奏が難しい曲なのですが、録音までにツアー中で、期間が1週間ほどしかなかったので大変でした。久石さんの前で演奏するのはとても緊張しましたけれど、『とても完璧だ』とおっしゃったときはうれしかったです。自分が関わらなくても映画化されたら観たいと思っていた作品なので、こんな形で携わらせていただけて光栄です」
辻井は、以前から久石の音楽が好きだったというが、話を聞くと最初はやはりスタジオジブリの映画からだそうだ。 「すごくメロディーが素晴らしいですし、聴きやすい。いつかジブリ映画で弾けたらいいなと思っていたとき、こういうお話をいただいたんです。久石さんの曲は、この話にぴったりのメロディーで、途中からピアノ協奏曲のような部分とかもあり、ピアノとオーケストラの掛け合いが本当にすばらしいんです。久石さんがどういう思いでこの曲を書いたのかなと楽譜から読み取りながら、ずっと練習しました」