日本の6分の1にあたる「就職氷河期世代」。バブル期の売り手市場との落差が語られがちだが、特に<99年3月卒業生>以降の就職率や求人倍率は…
◆前期世代と後期世代 その後、景気はいったん底を打ち、1995、96年ごろは徐々に回復傾向にあるようにすら思えた。 ところが、97年の秋になって、北海道拓殖銀行と山一證券が相次いで破綻、金融危機の様相を呈し、翌98年にかけて景気が一段と悪化した。 この影響が出始めるのは、98年に就職活動をし、翌99年3月に卒業した学年からである。 図序-1を見ても、99年卒から、就職率や求人倍率ががくんと下がり、2000年代初頭にかけては過去30年間で最低の水準まで落ち込んでいたことがわかる。 このように、97~98年の金融危機の前後で、雇用情勢はかなり異なる。 この点を踏まえて、本記事では、93~98年卒を「氷河期前期世代」、99~04年卒を「氷河期後期世代」と定義して、区別する。 氷河期前期世代はそれ以前の売り手市場との激しい落差を経験した世代、氷河期後期世代は雇用の水準そのものがどん底だった世代だ。
◆就職氷河期世代の陰 ところで、図序-1を眺めていると、04年卒と05年卒の間にそれほど差がないことにも気づく。 確かに、05年卒はその直前の学年よりは多少数字が改善しているものの、就職氷河期が終わったといってよいほどの回復ぶりではないように思う。 しかし05年卒以降の学年を就職氷河期世代に含めている文献はほとんどなく、就職氷河期世代向けの政策対象からも外れることが多かった(ただし、現行の「就職氷河期世代支援プログラム」では2000年代に卒業した世代は全て含むよう対象が拡大されている)。 本記事も他の文献との整合性を考えて04年卒までを就職氷河期世代と定義するが、本当は06年卒くらいまで就職氷河期世代に含めるべきなのかもしれない。 その後、07~09年卒でいったん90年代半ばと同水準まで回復するものの、08年秋のリーマンブラザーズの破綻に始まる世界同時恐慌(リーマンショック)の影響を受けた10年卒以降の数年にわたって再び落ち込む。 就職氷河期世代の陰に隠れて注目されにくいが、そのすぐ下の世代についても注意深く目を配る必要があるだろう。 ※本稿は、『就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
近藤絢子
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