日本の6分の1にあたる「就職氷河期世代」。バブル期の売り手市場との落差が語られがちだが、特に<99年3月卒業生>以降の就職率や求人倍率は…
◆ロストジェネレーション また、「就職氷河期世代」と似たような意味で、「ロストジェネレーション」「ロスジェネ」といった言葉もしばしば使われる。 こちらは、2007年に朝日新聞社が、当時25~35歳の若者を指して名付けた言葉だ。 1972~82年生まれに相当し、そのほとんどが就職氷河期に学校を卒業して社会に出た。 このように定義に多少の幅はあるものの、バブル崩壊後に10年あまり続いた就職難の時期に社会に出て、2024年の現在30代の終わりから50代前半となった世代が就職氷河期世代である。 若年期に良好な雇用機会に恵まれなかった結果、中年となった今でも経済的に不利な立場にあるとされる就職氷河期世代だが、当時の就職状況を再確認したうえで、この世代がこれまでどのような形で語られてきたのかを、振り返ってみたい。
◆マクロ指標で見る就職氷河期 1980年代後半から直近までの、新卒採用市場関連の指標を図示する。網掛けの部分が就職氷河期である。 図序-1は大卒・短大卒の就職率及び大卒求人倍率、図序-2が高卒の就職内定率と求人倍率で、どちらも横軸は卒業年である。 図序-3は日本の労働力人口全体に対する失業率で、実際に就職活動をしていた時期と対応させるためには卒業年よりも1年前にずらして見る必要がある。 バブル崩壊後の景気後退は1991年から始まっていたが、その影響が本格的に新卒採用市場に及びはじめたのは93年卒である。 図序-1を見ても、93年卒から急激に就職率や求人倍率が落ち込みはじめたのがわかる。 92年卒から95年卒までの3年間で、就職(内定)率は10~20%下がり、求人倍率は半分以下になっている。 短期間にこれほど急激に雇用情勢が悪化したのは過去30年間でもこの時期だけである。前述のとおり、「就職氷河期」という言葉が生まれて定着したのもこのころである。 このように急激な変化を経験する一方で、就職率や求人倍率、失業率などの水準自体は、2000年代半ばの「景気回復期」とされていた時期と同じくらいだった点にも注目したい。 就職氷河期の初めのころは、就職率自体はその後の25年間の中で必ずしも悪いほうではないのである。 しかし、その直前のバブル景気の時代が極端な売り手市場であったため、そこからの落差が問題だったのだ。
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