「本当は10年かけたかった」鈴木敏夫プロデューサーが語る、宮﨑駿最後の長編の“反作用” #ニュースその後
宮﨑駿監督の長編復帰作『君たちはどう生きるか』がゴールデングローブ賞アニメ映画賞を受賞した。2023年7月に公開され、「宣伝一切なし」の手法が話題になった。鈴木敏夫プロデューサーは「これまでやったことのないことをやりたかった」と語る。「宣伝なし」の真意は。鈴木さんが考える本作の真の価値とは。(取材・文:長瀬千雅/撮影:伊藤菜々子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部) ※取材は2023年12月末、東京・恵比寿にある鈴木さんの隠れ家「れんが屋」で行った。
「宣伝なし」の真意
映画『君たちはどう生きるか』は、事前に一切宣伝をしなかったことが話題になった。ふたを開けてみれば、興行収入は85億円を超え、公開から6カ月経った今も上映が続く、ロングランヒットとなっている。 ──「宣伝なし」を決めたのはいつだったんですか? 「最初から。隠していたわけでもなんでもなく、そう書いてますよ」 鈴木さんが取り出したのは、2017年7月号の『図書』という冊子。〈この作品は、お金が掛かる。回収もままならないだろう〉〈もう同じ事はやりたくない〉〈新しい試みはふたつある。第一に、これまでやって来た製作委員会方式を解消する。第二に、大宣伝もやめる〉 「いろいろ考えたんです。僕は今年75歳になったんです。70歳を超えて映画に関わる。じゃあ何をやるか。若い時のようにしゃかりきにがんばればいいってものじゃない。宮さんにも、本田くん(作画監督の本田雄さん)をつれてきて、それでやろうと提案した。若い人の力を借りよう、やり方を変えようということです。で、同じことが僕にも言えるんですよ。ただ僕の場合、残念ながら僕に代わる誰かがいなかったから。となれば、やることを減らす。その結論がそれなんです。で、実行に移してみようと」 ──宣伝しないことによって話題を呼ぶことを狙ったわけではなくて? 「そんなの狙うわけないじゃない。来てほしいなら宣伝しますよ。宮﨑駿といえど、映画がやっていることを知らなければ、お客さんは来ないんだから。来なくていいと思ったんです。最初から回収することを目標にしなかったんです。かけたお金を回収しないと決めたから、宣伝しないってことを考えたの。で、製作委員会もやめる」