鍵は成長パターン?約6億年前出現、奇妙な最古動物の正体探る新研究
動物が地球上に現れたとされる6億年前。その最古の動物たちは、先カンブリア代末期のエディアカラン紀(6.35―5.42億年前)の短期間に突如多数現れました。 たくさんの謎に包まれているそれらエディアカラ生物群で、最も有名なディッキンソニアの成長パターンに着目した最新の研究が発表されました。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が報告します。 ----------
生物史における動物の出現
A long time ago in a galaxy far, far away…… 昔、むかし、そのムカシ。銀河系のはるか彼方において、映画「スターウォーズ」のキャラクターたちは大活躍した。そしてはるか太古の昔、「動物」と呼ばれるグループに属す生物種も、長大な生物の歴史において、(この地球上に)初めて出現した時が確かにあったはずだ。 化石記録によると、その時期は約6億年前とされる。 最古の動物達の登場の仕方は、ひいき目にみても実に劇的で、爆発的ともいえる。四球や盗塁、送りバンドにエラーなどで最少得点を刻み続けるよりは、満塁ホームランを含む大量得点のイメージがふさわしい。 生物の進化史において、最初期の動物種は、かなり短期間のうちに、実に様々な形や大きさをもつグループが多数出現した。それ以前、地球各地の温暖で遠浅の海には、顕微鏡サイズの単細胞生物しか漂っていなかったようだ。 どうして何十センチにも達した体をもつ生物が、突然、一堂に進化することになったのだろうか? 生物進化を探求する上において、外すことのできない問いかけの一つ。古生物学上、生物の起源などとともに最も重要なテーマの一つだろう。 その当時 ── 先カンブリア代末期のエディアカラン紀 ── において、最古の動物達は、どうして短期間の内に出現し、多様化をすぐに遂げたのか? そのはっきりした理由を生物学者・古生物学者は、今のところ持ち合わせていない。様々な仮説とともに謎の中に潜んでいる。(地球の歴史上最大級とされる寒冷化現象 ── 「スノーボール・アース ── を経た直後の出来事という事実に、何かしらヒントが隠されているのかもしれない。) そして、エディアカラン紀(6.35―5.42億年前)に出現した「最古の動物」たちの姿そのものも、我々にとってかなり奇妙に映る(まるでスターウォーズに登場するさまざまな宇宙人のように。)そのほとんどが、我々にとって馴染み深い現生の動物種と大きく異なる様相をしていたからだ。はっきりいえるのは、この時代の地層から見つかる化石群の中には、多細胞生物としての「動物の特徴」を備えた種が、多数確認できるという事実だけだ。(その中には脊椎動物の直接の祖先にあたるモノも混じっていたはずだ。)