G2P-Japanアジアツアー2023~バンコク【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
で、先ほどのポストで見つけたのは、「DSPS」という台湾のバンドの「Unconsious」という曲だった。AirPodsを持たずに出てきてしまっていたので、パッポンストリートの喧騒の中で、iPhoneからそのまま音を鳴らして、左耳にそれをあてて聴いた。 イントロのギターリフがもう、往年のスーパーカーのそれである。懐かしい。 スーパーカーの3枚目のアルバム『Futurama』に、B&Voのフルカワミキが歌う「FAIRWAY」という曲がある。デビューアルバム『スリーアウトチェンジ』の頃の曲調で「FAIRWAY」を歌っているような、そんなにおいがする曲だった。 さらに、何を歌っているかわからない中国語(台湾語?)のヴォーカルが、後期のスーパーカー(というかVo&Gの中村弘二、通称「ナカコー」)っぽい。不思議なメタ的ともいえるノスタルジーを覚えながらそれを聴いた。良い曲なので、機会があればぜひ聴いてみてください。 タワレコやHMVに出かけて、視聴ブースでいろいろなCDをザッピングするような機会や時間も今はない。何より不惑を過ぎた身としては、ふとしたことをきっかけに新しい音楽に触れられる機会は、それだけで嬉しいものである。ある香港の夜、アジアン・カンフー・ジェネレーションの曲によって、20年近く前の台湾の夜の喧騒が想起された(78話)。 それと同じように、これで私の中で、バンコクのパッポンストリートの喧騒とスーパーカーが、この台湾のバンドによって紐づけられた感じもして、それはそれでちょっとしたラッキーな気持ちでホテルへと戻った。
■3年半前の記憶をなぞる 初めてバンコクを訪れたのは、2020年の2月下旬。そのときと同じホテルに滞在した。当時はまさに、「新型コロナパンデミック前夜」という時期だった。ある国際学会への参加のための訪泰(「泰」とは、漢字一文字でタイのこと)だったが、学会場にはいかにも仮設という感じのサーモグラフィーが設置されていた。不織布マスクをつけてまで熱帯の屋外を出歩く気にもならず、ずっとホテルの部屋にこもって、エイズウイルスについての論文を書いていた。 食事もほとんどルームサービスで済ませ、新型コロナウイルスの流行拡大を伝えるBBCのニュースを眺めていた。当時は、日本が新型コロナ感染の世界的ホットスポットのひとつで、東京の路上の様子を生中継で映していた。その帰路、羽田空港に着陸する飛行機の窓からは、ダイヤモンド・プリンセス号の姿が見えたような記憶がある。 パッポンストリートからホテルに戻った私は、当時と同じことをしてみた。当時の記憶をなぞるように、ルームサービスでガパオライスを頼む。それを食べながら、そしてコンビニで買ったチャーンビールを飲みながら、テレビでBBCのニュースを眺める。テレビからは、新型コロナのニュースの代わりに、イスラエル・ガザ地区のニュースが流れていた。