スタートアップ支援の今 特許・広報支援、財政措置 核融合の有力新興も恩恵 種市房子
今や、産業振興の一大テーマとなったスタートアップ。国と地方自治体はどのような支援を行っているのかを紹介する。 ◇特許戦略支援を受けた京都フュージョニアリング 軽い原子同士を融合させ、エネルギーを得る「核融合」。太陽で起きている現象であることから、「地上の太陽」と呼ばれる。この技術を開発している京都大学発のスタートアップ「京都フュージョニアリング」は、三菱UFJ銀行や三菱商事などから出資を受けている。今日、大手企業から熱視線を受ける同社だが、その成長過程でカギとなったのは、国のスタートアップ支援だった。 同社は、2021年に特許庁から特許戦略で支援を受けた。特許庁は、創業間もないスタートアップを対象に、知的財産(IP)戦略の立案を助言・支援する仕組みを持っていた(現在は独立行政法人工業所有権情報・研修館に移行)。特許庁所属の知財やビジネスなどの専門家チームが入り、5カ月間、2週間に1回程度の頻度で知財戦略のポイントを助言して、同社メンバーと議論を交わした。 特許を申請すれば当該技術は一定期間守られるものの、技術の詳細が明らかになってしまう。ブラックボックス化したい技術はあえて特許申請しないという戦略も選択肢だ。同社は「特許を取得するべき要素、秘匿するべき要素を議論し、知財の守り方に関する知識を習得できました」と成果を語る。 同社では、特許出願者が、自分の担当製品・技術に注力するあまり、会社全体のビジネスへの関連を見逃しがちだったという。しかし、特許庁の支援でビジネスモデルを整理して、技術とひもづけした結果、各技術者が全体像を意識した研究・開発を行えるようになったという。 同社関係者は、実証実験の助成や、広報支援や国内外のイベント出展のサポートを受けられる「Jスタートアップ」に選出されたことや、日本貿易振興機構(JETRO)による海外拠点展開時の支援も、成長の原動力であったと振り返る。