スタートアップ支援の今 特許・広報支援、財政措置 核融合の有力新興も恩恵 種市房子
このプログラムで事業化したのは431のビジネス。うち、5年が経過した事業に限れば、継続率は96%に上る。17年の中小企業白書によると、起業5年経過時点の企業の生存率は約82%。プログラムでの事業継続性の高さがうかがえる。 同プログラムでは、初期投資は数百万円単位という事例も珍しくない上、必ずしも先端のテクノロジーを使っていない。たとえば、長野県佐久市では工場跡地をリフォームし、エネルギー源から原材料まで全てを自然素材で賄う「どぶろく」製造事業が立ち上がった。行政からの交付金、地域金融機関融資とも433万円だった。このほかに承認された中には、空き家を活用した料理店や民宿、グランピング施設、産品のブランド化などの事例もある。総務省地域政策課は「社会課題は地域に転がっている。その解決をビジネスにつなげていく役割を果たせれば」としている。 ◇倒産件数は過去2番目 帝国データバンクによると、24年度上半期(4~9月)の倒産件数は、物価上昇が影響し4990件と、上半期としては13年度以来の高水準だった。うち、業歴10年未満の「新興」は1534件で、上半期の件数としては09年度以来2番目の高さだ。起業ブームの裏側で一定数の企業が退出しているのが現実だ。こうした厳しい現状にあっても、無名でもスモールスタートで挑戦できる、あるいは倒産しても再挑戦できるという制度こそ、官に求められる支援だろう。 第1次地方創生、1億総活躍、脱炭素──。国・地方はこれまでも、ブームの事案に税財政支援を講じてきたが、効果が疑問視されたり、下火になったりした政策もある。「スタートアップ支援」をうたった個々の政策が真の産業振興策となっているのかについては、長期的な監視が必要だ。 (種市房子〈たねいち・ふさこ〉ライター)