スタートアップ支援の今 特許・広報支援、財政措置 核融合の有力新興も恩恵 種市房子
OISTではスタートアップ支援のメニューをそろえる。世界中の応募者から選ばれた起業家が、約10カ月間OISTに滞在し、学内の設備や人材を活用して沖縄での企業設立や事業開始につなげる。研究資材や、展示会・会議参加のための旅費など、最大1000万円の事業費支援がある。外部講師による起業講座や、起業家や投資家、各産業界の専門家やビジネスパーソンがメンターを務める相談体制も充実している。これまでに、更年期専門のオンライン・婦人科診療外来サービスを展開する「ハーライフラボ」などのスタートアップが生まれた。 政府がこの成功体験を基に進めるのが、東京都目黒区・渋谷区にまたがる敷地で進む「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想」だ。国内外の研究者を呼び込み、28年度以降の創設を目指す。22年に内閣官房に担当部署が設けられ、直後には補正予算で調査費などが盛り込まれた。現在は有識者会議開催など地道な準備作業を続ける。 ◇小粒・地方発起業にも スタートアップといえば、都市部・大規模・ハイテクの3要素を想起しがちだが、その逆を行く、総務省の財政支援事業「ローカル10000プロジェクト」が好調だ。ローカルビジネスの立ち上げに最大で5000万円を支援するプログラムで、10年代に交付金を活用した事業として普及した。24年度は5カ月で申請が当初予算枠を埋めてしまったため、一時募集を停止。補正予算で、新たな申請に対応するために21億円が計上された。 支援の条件は、事業モデルが地域資源を活用していること、社会課題の解決に資することだ。加えて、地域金融機関の融資や地域活性化ファンドの出資、クラウドファンディングの併用も求めている。事業を共に支援する地域金融機関には、原則として無担保融資を求める。 信金や地銀などの地域金融機関は、無担保で融資するとあって、事業性を慎重に審査し、事業開始後の相談などにも熱心に応じるようになる仕組みだ。