貨物列車の「車軸折損」、本当の原因は何なのか? 不正追及の傍らで忘れ去られている技術の本質とは
今回の車軸折損は、貨物列車を先頭で牽引する電気機関車で発生した。ここまでの図解は、わかりやすさを優先して動力を持たない車両の輪軸について描いたが、電気機関車の輪軸は駆動するための主電動機(モーター)と、その回転を輪軸に伝える歯車が付いている。日本の電気機関車は、主電動機の重量の半分を車軸で支える“吊り掛け式”と呼ばれる方式である。 ■何をもって「安全」と判断するのか? 2024年9月10日付のJR貨物プレスリリース「輪軸組立作業における不正行為の発生について」には、その背景として「いずれの箇所においても、作業担当者は、圧入力値を下回った場合は、車輪及び大歯車の固定に不具合が生じる可能性があると認識していましたが、基準値を若干超過する分には問題が無いものと認識していました」とある。
これはもちろん不正行為の言い訳にはならないが、「圧入力の過大と過小、どちらが輪軸にとって危ないか」という質問に対して、「過小の方が危ない」という回答は正解である。 同プレスリリースでは当面の対応として、「検査結果データが基準値を超過していた輪軸を搭載した車両は運用停止(中略)可及的速やかに車軸の検査を実施します」とあるが、筆者は何を検査するのか疑問に思った。また同日の国交省プレスリリースには「安全に運転することができる状態であることが確認されるまで、使用を停止すること」とあるが、何をもって安全と判断するのかはまったく書かれていない。
ことの発端は車軸折損による脱線事故である。その再発防止が最優先であるはずなのに、不正行為の追及が最前面に出てきて、技術の本質が忘れ去られているように思えてならない。関係者が技術的に正しい認識を共有しない限り、作業上で決められた基準値を遵守するというだけでは、真の安全確保は達成できないと考える。 ■技術の本質を学ぶ姿勢 輪軸組立における締め代や圧入力について規定した日本産業規格「JIS-E 4504鉄道車両用輪軸-品質要求」が制定されたのは1970年である。その数値は旧日本国有鉄道規格JRSと同じだそうで、その数値の根拠は1949年に旧日本国有鉄道工作局が作成した仕様書に基づいているそうである。それまで現場任せだった数値を規格化した意味は大きいが、70年以上前に決めた数値で現在も管理が続いているということである。