貨物列車の「車軸折損」、本当の原因は何なのか? 不正追及の傍らで忘れ去られている技術の本質とは
■輪軸の構造と組立作業 鉄道車両も自動車も左右に車輪を有するが、車輪の役割と構造は異なる。重量を支える役割は同じであるが、鉄道車両の車輪は地上のレールに沿って車両を誘導する自己操舵機能を持つ。その構造は、自動車の車輪が左右独立して異なる回転速度を許容するのに対し、鉄道車両の車輪は図に示すように車軸で左右固定され、踏面(とうめん)と呼ぶレールに接する面がわずかに傾斜しており、左右レールの中心へ車両を案内する。
左右の車輪を車軸に嵌め込んだものを輪軸と呼び、1対(つい)と数える。車両の種類にもよるが、車輪中央の穴の内径は概ね150~200mm程度で、その内径は嵌め込む車軸の外径より0.2~0.3mm程度小さくして締め代を設けておく。そして油圧を使ったプレス機により、車輪を車軸に強い力(30~100トン程度)で圧入する。締め代や圧入力については、日本産業規格「JIS-E 4504鉄道車両用輪軸-品質要求」で規定されている。
文章だけではイメージが湧かないと思うが、ユーチューブなどの動画サイトで「車輪圧入作業」と検索すれば、いくつかの動画がヒットする。中には西武鉄道の武蔵丘車両検修場における車輪圧入作業の一般公開を撮影したものもあり、作業員による音声の解説があるので手順がよくわかるとともに、圧入力の変化を示すチャートまで映っているので、今回問題となっている圧入力の管理について理解しやすい。 車輪は走行により摩耗したり、滑走により傷付いたりして、踏面の形状がいびつになるので、外周を正しい形状に削り直しながら使用する。一般的な電車の車輪直径は新品時860mmだが、削り直すたびに直径が減少するので、下限値780mmに達する前に車輪を交換する。その際はプレス機により圧入とは逆方向に力をかけ、車軸から車輪を抜き取る。車軸は超音波により傷の有無を調べ(人体のエコー検査と同じ)、問題なければ再使用する。