“無理難題”求められるミニバン 新型アルファードの正しい進化
トヨタのアルファード/ヴェルファイアがモデルチェンジした。中身は同じなので、以後アルファードとして書く。アルファードは、日本のミニバンの中で一番デカくて高いモデルだ。 【写真】「5ナンバー・ミニバン」が繰り広げる“消耗戦” 「そいつを言っちゃぁ……」と言われるかもしれないが、こんなエンジニアリング的に難しいクルマを5ナンバー枠で、しかも200万円かそこらで作れという方が無理なのだ。一応書き添えておくと、箱型じゃなくて、3列目が補助席あるいは緊急用でいいというなら、この限りでは無い。 だから3ナンバーのアルファードやエルグランドは、3列シートをちゃんと使うなら、高級とか最上級とかじゃなくてミニマムだ。少なくともエンジニアリング的に見て、3列ミニバンの要素を真面目に満たせる最下限なのである。320万円という価格は妥当を通り越してリーズナブルだとさえ思う。
ミニバンの苦悩とエンジニアの悲鳴
アルファードのクラスは、かつて欧州仕様商用車のハイエースを乗用に仕立てたグランビアとレジアスによって作られたクラスだが、世間に認知を広げビジネスにしたのは日産のエルグランドだ。 冒頭にも書いた通り、ミニバンはエンジニアリング的に難しい商品だ。ボディは大型の箱で、屋根が高い分重心が高い。そのくせ両側スライドドアにテールゲートと大穴がボコボコ開いているからボディ剛性はぐにゃぐにゃになる。その強度を床板で稼ごうにもウォークスルーのためにフラットフロアが求められ、センタートンネルで強度を出す設計は出来ない。床板を立体構築したくとも低床にして乗降性を確保しろと言われるから床は薄く作らなくてはならない。その上スペースユーティリティこそがメインの商材だから、サスペンションなどのメカニズムのために場所を割けない。 それはハイエースだって一緒だろう。というとそうなのだが、あちらは商用車。空荷の時の乗り心地が酷くたって文句は言われない。その分過積載でも走れるようにしろという別の理不尽な要求はあるけれど。 後ろのシートなどは畳んで邪魔にならないことの方が優先で、最悪の場合に人が座れればそれでいい。トラックの荷台に兵隊が載せられている状態でOKなのだ。だからシートも軽量簡素に作れる。豪華な内張りも邪魔なだけ。条件が厳しいなりに割り切る順番が明確だ。要は目的がはっきりしているのである。