プリウスのSUVモデル トヨタ「C-HR」ターボに感じる疑問
トヨタの新型コンパクトSUV(多目的スポーツ車)「C-HR」の受注が好調です。スポーツ性とデザイン性を意識したC-HRには、2WDで1.8リッターエンジンとモーターのハイブリッド(HV)モデルと、4WDで1.2リッターの直噴ガソリンターボモデルが用意されています。C-HRをどう評価するか。モータージャーナリストの池田直渡氏に寄稿してもらいました。 【写真】「新型プリウス」何が変わったのか? トヨタのクルマづくりの転換点
◇ トヨタは昨年12月14日、プリウスのSUVモデルであるC-HRを発売した。トヨタが全力を挙げて取り組むTNGA(Toyota New Global Architecture)第二弾であり、起動間もないプロジェクトの行方を占う重要なモデルである。トヨタにとっては幸いなことに、発売一か月後の受注台数は4万8000台に達した。月販目標台数6000台に鑑みて、どう割り引いても大成功と言える数字だ。
本命ハイブリッドモデルの評価
先代30型プリウスで、速度制御能力に問題があったトヨタのハイブリッドシステムは、一年前に発売された50型において、大進歩を遂げ、運転することが罰ゲームのようだったプリウスが、普通の範疇に入るようになった。積極的におすすめするかどうかはともかく、少なくとも知り合いが買った時に、口をつぐむ必要はなくなり、燃費のメリットや、リセールバリューまで含めれば、その選択も理解できるところまで来た。
そして一年後にデビューした10型C-HRは、この速度制御能力がさらに一歩進んで、現行ハイブリッドモデルの中では間違いなくベストの一台に、Cセグメント全体の中でも比較的上位にランキングできるところまで来た。加減速に関しては、回生制御とブレーキの協調部分にまだ違和感があることだけは書いておきたい。 ハンドリングの問題も改善された。速度制御能力と同じ様に、30より50。さらにC-HRが良くなった。リヤサスペンションの取り付け剛性不足で、切り返しで舵が効かなくなる瞬間があった30に対し、50はサスペンション形式そのものを変えて根源的に解決した。このサスペンションの熟成が進んで、C-HRではリニアリティ(操縦安定性)が向上した。そもそも燃費のチャンピオンでなくてはならないプリウスが極端な低転がり抵抗のエコタイヤを選ばざるを得ないのに対して、C-HRはタイヤの選びも自由だ。 エンジニアが「あのタイヤを使わないとJC08燃費がリッター5キロから10キロは落ちます」と言うほど極端に燃費性能に特化したタイヤは当然他の性能が劣る。タイヤの性能をサスペンション側がカバーしなくてはならないプリウスはどうしても不利になるのだ。ということでC-HRはことハイブリッドモデルに関しては、トヨタの戦略上にしっかりポジショニング出来ており、かつその製品の完成度もメーカーの主張する「意のままの走り」と言う言葉がウソになるほどは乖離していない。