プリウスのSUVモデル トヨタ「C-HR」ターボに感じる疑問
社内でブレがある? ターボの考え方
ハイブリッドは長らくトヨタのエコ戦略の主力として位置づけられて来たユニットなので、トヨタ全社の中で捉え方が一致している。しかしターボはそうではない。欧州勢が小排気量&レスシリンダー+ターボという戦術を採って来たことへの対抗として登場したユニットだ。エコ・ユニットとして傍流である。そのため、1.2ターボの意味が社内でブレている。これはTNGAの戦略にとってはあまりよろしくないことだと思う。 C-HRの開発エンジニアが「もっとパワーを出して、マニュアルトランスミッションと組み合わせたい」と言うのを聞いて驚いた。スポーツターボとエコターボはコンセプトが正反対のエンジンなのだ。あのエンジンをその方向で仕立て直すのは無理がありすぎる。 エンジンが「吸気・圧縮・燃焼・排気」というサイクルで動いているのはご存知だろうが、吸気行程だけを切り出してみれば、エンジンはポンプである。タービンの様な仕掛けであれば、吸気は連続して流れ込む。しかしピストンで吸い込むレシプロエンジンでは吸気は断続的なのでどうしても脈動が起こる。吸い込まれ、止められを繰り返されると空気はゴムボールを潰したり放したりした時のように圧縮と膨張を繰り返す疎密波(そみつは)になる。吸気弁が開いている時に、この疎密波の「密」の部分を吸い込めば効率が上がり、「疎」の部分で吸い込めば効率が落ちる。 それを調整するのは吸気系全体の体積である。弦楽器が弦の張力で音程を決めるのと同じように、原則的には効率を最高に出来るのは1点だ。つまり1500~5600rpmの全てに合わせて最適化することは物理の支配する世界では出来ない。ただし、弦楽器に倍音があるように、疎密波の反射を上手く使えば、ベースとなる周波数とその倍の2点で最適化できる。この谷間でへこたれたエンジンにしたくなければ、疎の時でも十分にトルクが出るように排気量を増やすしかない。逆に言えば小排気量エンジンの設計は吸気系の容積設計によって、ほぼポテンシャルが決まってしまう。