こうのとり8号機ミッション完了 JAXA会見(全文2)ISSではタマネギが人気
成功を重ねていても難しいポイントはあるのか
林:ライターの林と申します。このたびはおめでとうございます。「こうのとり」8号機で、非常に安定した飛行だと思うんですけれども、それでも毎回毎回、すごく緊張するポイントがあるとおっしゃったんですけれども、成功を重ねていても難しいポイントっていうのを、あらためて教えていただけますか。 植松:どちらにご質問され。 林:どちらでも。 長浜:やはりポイントとしては分離後、きちっと通信を確立するかどうかっていうところですね。しっかり通信が見えないと、どうなっているか分からなくなってしまうので、そこはやはり、「こうのとり」に限らず衛星プロジェクト等もそうだと思うんですけれども、一番分離されてダイナミックに動きがあるところですので、そこはまず一番目に緊張、いつも気が抜けないところです。 それからあとはキャプチャーのところですね。「こうのとり」の特徴的なミッションのところではありますけれども、やはりキャプチャー間際のところっていうのは、場合によっては分単位、秒単位の判断が求められる場面ですので、キャプチャーのところとか、あとは分離のところですね。そこはやはり合軌道化されても変わらず気が抜けないところかなというところです。 林:何か補足があればお願いします。 植松:今、長浜のほうからご説明あったように、やはり分離のところ。特に今回の分離はスタートラッカーという非常に新しいものを使ってましたので、それが期待どおりに動くかどうかというところが最もクリティカルなところでした。もし万が一、そのスタートラッカーに分離直後に問題が起きたときにどうするかっていうのは、かなりの時間を掛けてプランを詰めておりましたので、それをまったく使う必要がなかったというのは非常にほっとした瞬間ではありました。
9号機ではどんな実験を検討しているのか
林:それから、9号機についてお伺いしたいんですけれども、今回はスタートラッカーとかラックを今後に向けてということで、新しい実験としてなさったと思うんですけども、9号機で今、どんな実験を検討なさっているのかというのを可能な範囲で教えていただきたいんですが。 植松:9号機では、9号機がHTVとしては最後の、「こうのとり」としては最後のフライトになります。それ以降は新型宇宙補給船と、HTV-Xということで開発を今、進めておりますけれども、HTV-Xで今、実証しようとしてる技術の中の1つにドッキングと、自動ドッキングという技術がございますけれども、これで必要となるWi-Fi通信、これは今まで日本の宇宙船としては使ったことがなかったんですけれども、9号機にはこのWi-Fi通信装置を搭載して、宇宙ステーションと直接Wi-Fiを使って通信をしようと。それを将来的にはHTV-Xで使う自動ドッキングに応用していくというようなことで、技術実証の実施を考えております。 林:小型カプセルは。 植松:小型カプセルは、9号機に搭載という話もあったんですけれども、それはこのJAXAの内部でいろいろ議論いたしまして、やはり同じことをもう1回やるというよりは、それよりももっと先の、いわゆるポストISSといわれている宇宙ステーションの、その後の計画の中で活用していけるような実験実証をしていこうということで今、大きな見直しをかけているところで、9号機への搭載は今のところしない計画でしております。 林:Wi-Fi通信というのはどのタイミングで使うんですか。どんな実験になるんですか。 植松:ご存じかと思いますけれども、「こうのとり」は宇宙ステーションに近づいていって、最後は真下から上へ、ゆっくりゆっくり上がっていくんですけれども、その真下に入ったところでWi-Fi通信が確立すると考えられておりますので、その中でWi-Fi通信をしながらゆっくりゆっくり宇宙ステーションへ近づいていって、そのときに、カメラも搭載しておりますので、カメラで接近してくる宇宙ステーションの姿を、Wi-Fi回線を使って伝送しようというようなことを考えております。