【全文】ノーベル医学生理学賞の大村智氏「全て微生物がやっている仕事」
日本人は本当に微生物の性質を知っている
大村:今、総理大臣から電話があるそうですけども、ちょっと待たされております。Time is moneyですね。 本日はこのように皆さん大勢お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。私は今日は、朝、出掛けるときは、もう4時半ごろはうちに帰るように手はずを整えてきたんですが、秘書がなかなか帰ろうと言わない、帰してくれない。なんかあるのかなと思っていましたら、秘書のほうはなんか、予感がしたのかなんか知りませんけども、待つように、待つように、待つようにと言いましたから待っていましたら、スウェーデンから電話がありまして、そういうようなことでもう、ただ驚いちゃって。 私の仕事は微生物の力を借りているだけのもので、私自身がえらいものを考えたり難しいことをやったりしたわけじゃなくて、全て微生物がやっている仕事を勉強させていただいたりしながら、今日まで来てるというふうに思います。そういう意味で、本当に私がこのような賞をいただいていいのかなというのは感じます。 皆さん、周りの人たちがそういう仕事を、成果を上げたといって評価をしてくれてましたけど、私自身は正直言って本当に、微生物がやってくれた仕事を、私はそれを整理したようなもんですから、そういうのは仕事でないと。それにしても、こうやって振り返ってみますと、部屋の諸君、いつも数十人のグループで共同研究をやってますが、皆さんが本当、心を1つにして、大きな目的に向かって歩んできてると。これを私は非常に幸せなことというふうに思っております。これからもおそらく、このずっと若い人たちが、こういうふうな仕事を続けて世の中に役に立つようなものをまた見つけてきてくれるんじゃないかと期待をしているところであります。 なんか、このようなことは初めてのことでして、どうしていいか分かりませんけども、あいさつはこのくらいで、あとなんか。ただ幸い、ちょっと時間がまだ、総理のほうからのもあれですけども、日本っていうのは微生物をうまく使いこなして今日まで来ている歴史がありますので、そういうのを大事にしております。 食糧にしても、それから人の例えば、農業生産にしましても、われわれの先輩たちは本当によく微生物の性質をよく知って、そして人のために、世の中のためにという姿勢でずっと来ている、そういう伝統があると思うんですね。そういう中の一環、ほんの1点として私が存在するというふうに思っているんです。そういう環境に生まれたということは良かったと思いますし、今回のこの受賞につながることができたのは、そういう先輩たちが築いてくれた、そういう学問分野の中で仕事ができたというふうに思います。 それからもう1つは、北里柴三郎先生、尊敬する科学者の1人なんですが、とにかく科学者というのは人のためにならなきゃ駄目だ。自分のあれだけでやるんじゃなくて、人のためにやるということが非常に大事なことなんだっていう実学の精神、これは北里先生の実学の精神でおられ、私自身も若い人たちとその話をする。 ですから人のために少しでもなんか役に立つことないかな、なんか役に立つことないかな、微生物の力を借りてなんかできないか。これを絶えず考えております。そういったことが今回の賞につながっているんじゃないかと思っています。 まだなんか。もう、皆さんから質問があればそれに答えたほうがいいんじゃないですか。もう少し、皆さんの前に立つのならちゃんとした服装で、もっといいネクタイをしてくれば良かったと思って、はい。 司会:それではここで、会場からの質問を受けてよろしいでしょうか。 大村:はい、どうぞ。 司会:それではこれから、この会場にいらっしゃる方々からご質問をお受けしたいと思います。