【全文】ノーベル医学生理学賞の大村智氏「全て微生物がやっている仕事」
2015年のノーベル賞「生理学・医学賞」は、北里大学特別栄誉教授の大村智氏ら3氏が受賞した。受賞を受け、大村氏は5日夜、東京の同大薬学部で記者会見を開き、喜びを語った。 【アーカイブ動画】ノーベル医学生理学賞の大村智氏が北里大学で会見
■大村氏の略歴を紹介
司会:大変お待たせいたしました。ただ今より、先ほどノーベル財団が発表いたしました今年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決定しました、北里大学特別栄誉教授でいらっしゃいます大村智博士の記者会見を始めたいと思います。 まず、学校法人北里研究所を代表しまして、理事長の藤井清孝よりごあいさつ申し上げます。 藤井:学校法人北里研究所の理事長の藤井でございます。座ってお話しさせていただきます。まずは皆さまにとても素晴らしいお知らせとして、今年のノーベル生理学・医学賞を、私ども北里研究所顧問で、北里大学特別栄誉教授でおられます大村智博士が受賞されますことをご報告申し上げます。私ども教職員・学生一同もこのような素晴らしい機会に立ち会えましたことを大変光栄に感じております。受賞されました大村博士に心よりお喜びを申し上げます。 具体的な業績に関しましては小林学長より報告申し上げますが、大村博士の卓越した探究心、探索心、研究心、不断なご努力が評価されたものと理解しております。翻って思い起こせば、北里研究所創設者の北里柴三郎博士がドイツ留学中に破傷風菌の純粋培養に成功し、さらにその血清療法を確立したことで、第1回のノーベル医学賞の候補になっていたと聞き及んでおります。そのときは残念ながら無念の涙を飲みましたが、1世紀を超えて大村博士がその栄誉あるノーベル賞を受賞されますことは、非常に感慨深いものがございます。 小林:ご略歴。昭和29年、1954年3月、山梨県立韮崎高等学校卒業。昭和33年、1958年3月、山梨大学学芸学部自然科学科卒業。昭和38年、1963年3月、東京理科大学大学院医学研究科修士課程修了。同4月、山梨大学工学部発酵生産学科助手。昭和43年、1968年10月、北里大学薬学部助教授。昭和50年、1975年4月、北里大学薬学部教授。昭和59年、1984年5月、社団法人北里研究所理事・副所長。平成2年、1990年6月、社団法人北里研究所理事・所長。平成13年、2001年4月、北里大学北里生命科学研究所教授。平成20年、2008年4月、学校法人北里研究所名誉理事長。平成23年、2012年7月、学校法人北里研究所顧問。平成25年、2013年3月、北里大学特別栄誉教授。 受賞歴は非常にたくさんございまして、このリストだけで18ありますので、最近のだけご披露させていただきます。平成24年、2012年11月、文化功労賞。平成26年、2014年10月、カナダ、ガードナー国際保健賞。平成27年、2015年1月、朝日賞。 次に、大村智教授の研究成果について簡単に説明させていただきます。大村教授は静岡県の土壌より放線菌、Streptomyces avermectiniusを発見し、米国・メルク社との共同研究で、1979年にこの放線菌が生産する抗寄生虫薬エバーメクチンおよびジヒドロ誘導体イベルメクチンを発見、開発されました。イベルメクチンは動物薬として1981年に発売され、今日まで世界で最も多く使用され、食料の増産や皮革産業の発展に多大な貢献をしました。 さらに、イベルメクチンのヒト用製剤メクチザンは1987年よりWHOおよび関連機関による2つの重篤な熱帯病、オンコセルカ症、河川盲目症とも言いまして、目が見えなくなる病気です、と、リンパ系フィラリア症の撲滅プログラムにメルク社と北里研究所から無償供与され、毎年約3億人が服用しています。すでに中南米ではオンコセルカ症は撲滅を達成しており、目下アフリカにおいて本プログラムが大きく展開されており、多大な成果を上げています。前者は2025年に、後者は2020年に撲滅を達成できると予測されています。 現在でもエバーメクチンは大村教授が発見した放線菌によってのみ工業的に生産されています。また、この抗生物質生産菌のゲノム解析に取り組み、2000年に抗生物質生産菌としては世界に先駆けて解析を成し遂げました。この成果は現在活発に研究されているゲノムマイニングによる新規物質製造技術の基礎となりました。 1985年には世界で初めて遺伝子操作による新しい抗生物質を創製し、微生物創薬の発展の礎を築かれました。エバーメクチンのほか、種々の独創的な探索系を構築し、約5,000種の新規天然有機化合物を発見されました。この中には抗がん剤開発の元となり、また、ノーベル賞受賞者等の多くの生命科学の研究者に使われ、生命現象の解明に多大な貢献をしているプロテインキナーゼ阻害剤スタウロスポリン、1970年。プロテアソーム阻害剤ラクタシスチン、1991年。脂肪酸活性化酵素阻害剤トリアクシン、1986年、などがあります。 以上のように、大村教授は人類の健康と福祉の向上と、科学の発展に多大な貢献をされており、また、微生物創薬の発展に極めて大きなインパクトを与えています。以上でございます。 司会:小林学長、ありがとうございました。それでは今年のノーベル生理学・医学賞を受賞が決定されました大村智博士より、ひと言ごあいさつ頂戴いたします。会場の皆さまからのご質問はその後お受けしたいと思います。それでは大村博士、よろしくお願いいたします。 申し訳ございません。ただ今、安倍総理のほうから電話が入っておりまして、そのあと、大村先生のごあいさつをいただきたいと思います。