なぜ阪神ドラ2左腕の伊藤将司は球団として37年ぶりの新人開幕3連勝を飾れたのか…”先人”池田親興氏が分析する理由
阪神が8日、横浜スタジアムで行われた横浜DeNA戦でドラフト2位のルーキー、伊藤将司(25)が8回無四球6安打1失点の好投を見せて開幕以来、無傷の3連勝を果たした。新4番の佐藤輝明(22)が2打席連続タイムリーで、25歳の誕生日だった同期を後押しした。新人の開幕3連勝は阪神では1984年の池田親興氏以来、37年ぶりの快挙。なぜ伊藤は勝てるのか。池田氏に分析してもらった。
幻惑投法と精密コントロール
横浜高出身の伊藤にとってハマスタは“庭”だった。 「高校時代は、横浜スタジアムにお世話になった。プロでもプレーできたことはうれしい」 4-1のスコアが残る敵地でのヒーローインタビューに呼ばれた伊藤は清々しい顔をしていたが、第一声は「今日はホームラン1本で済んでよかった」である。 横浜DeNAは4月24日に1失点完投勝利した相性のいいチームだが、オースティン、ソトに当たりが出始め、宮崎が7番に座り、前日に14安打12得点を奪うなど本来の打線の調子が戻りつつあった。しかも狭いハマスタ。その爆発力は脅威である。伊藤がつい漏らした言葉は本音だろう。 だが、許した得点は、4回に先頭のドラフト2位の牧に打たれた同点の7号ソロの1点のみ。「ラッキー7」の裏返しで、投手にとって重要な7、8回は続けて三者凡退に抑えて球数は101球。勝利に万全を期すベンチに9回に代打を送られ、2試合連続の完投勝利は逃したが、伊藤の左腕が支配したゲームだった。 150キロを超える剛球があるわけではない。幻惑の緩急とコンピューターゲームのような精密なコントロールでDeNA打線を手玉に取った。1、2、3回と、序盤は続けて得点圏に走者を背負った。だが、ピンチを迎えたときこそが伊藤の真骨頂である。 立ち上がりに中野の送球ミスもあって一死一、二塁とされたが、4番の佐野は、142キロのストレートをインハイに投じてレフトフライ。5番の牧にはインローに142キロのクロスファイアを投じて一塁ファウルフライである。 この日の審判の低めのストライクゾーンが広いとみるや、そのゾーンを徹底的に使った。いわゆる内外角の低めの「凡打ゾーン」にカット、ツーシーム、スライダー、チェンジアップ、フォークといった変化球を巧みに落としていく。だが、手先だけの技巧には走らない。 故・野村克也氏が、よく口にした「技巧派の本格派」。要所では140キロ前半のストレートを使うことを忘れなかった。 5回には無死一塁から桑原にストレートをひっかけさせて遊ゴロ併殺打。続く6回にも一死一塁から前の打席でホームランを打たれている牧をアウトローの「凡打ゾーン」に投じた142キロのストレートを打たせて三ゴロ併殺打。打者はつい手が出るのだ。