“ブラックホールは存在した” アインシュタインの理論を100年かけて証明した科学者の情熱
ブラックホールの存在は理論上は予言されていたものの、実在するか否か、数十年もの間、科学者の間で大論争が起こったのです。
ブラックホールは質量の大きい恒星が生涯を終えた姿
ブラックホールは質量の大きい恒星が生涯を終えた姿なのだということが、物理学者スブラマニアン・チャンドラセカールやロバート・オッペンハイマー、ジョン・ホイーラーの研究によって、理論的に明らかになっていきました。“恒星の成れの果て”は、図のように恒星の質量によって変わります。ここではブラックホールとは、太陽のおおよそ20倍以上の質量を有する恒星が生涯を終える際に「超新星爆発」を起こした後の姿であるということを、頭の片隅に入れていただければ結構です。
長らく架空の天体だったブラックホールですが、1960年代に転機が訪れます。謎の「X線」がはくちょう座の方向から飛来するのが観測されたのです。そのX線発生源の位置を特定したところ、その近くに太陽の30倍の重さの恒星が発見されました。そしてその恒星を詳しく調べてみると、どうやら見えない天体の周りを回っていたことが分かったのです。恒星自身は強いX線を発しません。つまり、目で見えない“謎の天体”がX線を発していると考えられます。X線を発する謎の天体は「はくちょう座X-1」と名付けられました。重力で引き合う天体同士の回転周期、そして天体同士の距離から、天体の質量を求めることができます。その結果、はくちょう座X-1の質量は太陽の6~20倍程度と、見積もられました。
その後の時代に、X線観測衛星「ぎんが」がはくちょう座X-1のX線を詳しく調べられるようになると、なんとX線が1000分の1秒というとても短い時間間隔で変動していることが分かりました。その時間間隔に光の速度(秒速30万キロ)をかけると、天体の大きさを見積もることができます。これにより、はくちょう座X-1は半径300キロ以下の非常に小さな天体だということが分かりました。(参考:東京と大阪の距離が約400キロ)