“ブラックホールは存在した” アインシュタインの理論を100年かけて証明した科学者の情熱
X線を強く発するはくちょう座X-1は、目で見ることができず、大きさがとても小さく、さらに質量が太陽の6~20倍もありました。これらの観測事実から導かれた性質を全て満たす天体は、ブラックホール以外には考えられません。こうして、はくちょう座X-1はブラックホールだと認められるようになったのです。 それではなぜ、ブラックホールからX線が観測されるのでしょうか? X線は、温度の高い天体(数百千万~数億度)から多く発せられる電磁波のことです。科学者たちは次のように考えました。すなわち、まずブラックホール付近の恒星のガスが、強い重力によってはぎ取られ、ブラックホール周辺にガスの円盤を形成する。その円盤のガスがブラックホールに落ちる時のエネルギーによってガスが激しく加熱され、X線が放出される。
全ての銀河の中心にある超巨大なブラックホール
実は今まで紹介した、恒星が生涯を終えた姿である「恒星質量ブラックホール」よりもずっと質量の大きい、太陽の質量の数百万倍から数十億倍という超巨大なブラックホールも存在するだろうと考えられています。1950年代の後半に発見された点状の天体「3C 273」は、他の恒星と比べて奇妙な特徴を持っていました。まず、発する電磁波の特徴を調べてみると、3C 273自身は、おとめ座の方向に約25億光年 も離れた遠い場所にもかかわらず 、膨大な明るさ(天の川銀河の約100倍)で輝いていることが分かりました。 さらに、はくちょう座X-1の場合と同じように光の変動パターンから天体の大きさを見積もると、銀河系よりもずっと小さいということも明らかになったのです。この膨大な明るさと天体の小ささを説明するには、恒星質量のブラックホールと同様、ブラックホールの周りにガスの円盤が渦巻き、ガスがブラックホールに落下するときに激しく光ると考えるのが合理的です。 その後の観測で、3C 273から光の速度に近い超高速のプラズマのジェットが噴き出している様子が確認されました。ブラックホール自身は暗黒の天体ですが、その周辺で起こっている現象は、宇宙の中で最も明るく激しい現象なのです。