スタンフォード大の実験にみる「職場でのラジオ体操」がもたらす効果
「職場がギスギスしてる」「挨拶がない」「生産性を高めたい」...。組織力を高めるのはリーダーの大事な役割。楽しく一体感あるチームをつくるためにできる簡単なヒントを心理学者の内藤誼人氏が語る。 【図表】職場でのフォローに疲れた心をケアする、9つの習慣 ※本稿は、内藤誼人著『世界最先端の研究が教える新事実 対人心理学BEST100』(総合法令出版)より一部抜粋・編集したものです。
職場の生産性を上げるには、社員を楽しませるこんな工夫を
ビジネス書を読んでいると、「従業員を幸せにする会社ほど、生産性が高い」ということが書かれています。 なんとなく、「そうなのだろうな」とは思いますが、現実にきちんとした裏付けはあるのでしょうか。心理学者は、こういうときに、必ず実験をして確認します。 イギリスにあるウォーリック大学のアンドリュー・オズワルドは、「幸せな気分のときに、本当に生産性が高まるのか」を確認するための実験を、何度もくり返しました。参加者はのべ700人を超えます。楽しい気分にさせるために、オズワルドは第1実験と第2実験では、「コメディアンのビデオ」を使いました。コメディアンのビデオを10分間見せてから、2桁の数字を5つ足し算する(31+51+14+44+8787=?)という単純な計算作業をやらせてみたのです。 この実験では、できるだけ早く、できるだけたくさん解くことが求められました。正解すると1問につき、0.25ユーロが支払われることになっていたので、参加者は真剣に取り組んでくれました。これで生産性を測定してみたわけです。 その結果、コメディアンのビデオで大笑いした後には、たしかに生産性は上がっていました。「楽しい気分を与えてやれば、生産性は上がる」ということは、本当のことだったのです。 オズワルドはさらに、果物やチョコレートを食べさせることで幸せな気分にさせたときはどうなるのかも実験しました(第3実験)。このときにもやはり、生産性は上がりました。 お笑い映画を見せようが、おいしいものを食べさせようが、幸せな気分にさせるやり方はどうでもよいようです。どんな形であれ、「楽しいなあ」「幸せだなあ」という気持ちにさせることができれば、生産性は12%ほど高くなる、ということをオズワルドは突き止めました。 もし私が会社の経営者であれば、従業員を楽しませることを第一に考えるでしょう。 従業員が楽しく仕事をしてくれれば、生産性は上がるからです。「みんな手を抜くな!」とか「真剣にやれ!」とハッパをかけなくとも、楽しい気分にさせることができれば、生産性は自然に上がります。 たとえば月曜から金曜まで、遅刻をせずに出社した人には、毎日1枚ずつトランプのカードを引かせるのもよいでしょう。 月曜から金曜まで1日も遅刻も欠勤もしなければ、5枚のカードが手に入ります。その手持ちのカードでポーカーを行い、一番高い役の従業員にはボーナスが出る、という楽しい取り組みをしたところ、従業員の遅刻や欠勤率を下げることができて、しかも生産性もアップしたという論文もあります。 どうせ仕事をするのなら、みんなで和気あいあいと楽しい気分でやりたいものです。そういう雰囲気づくりをしてくれる上司や社長の下でなら、従業員は一生懸命に仕事をしてくれるのです。