スタンフォード大の実験にみる「職場でのラジオ体操」がもたらす効果
社員の一体感を高める簡単な方法
職場でのラジオ体操は、取り入れたほうがいいでしょう。一緒に動きを合わせれば、社員の一体感が高まり、絆が強化されます。毎朝ほんの10分程度の時間を使うだけで「社内の和」が生まれるのですから、すぐに始めていただきたいと思います。 軍隊や教会、コミュニティなどで、一緒に歌を歌ったり踊ったり、行進したりするのはなぜでしょうか。その理由は、このような活動が”シンクロニー(同調傾向)"を高めて、メンバーとの心理的な絆を強める働きをするからです。 「一緒に何かすると、私たちはとても仲良くなれる」ということを、昔の人たちは経験的に知っていたのかもしれません。 米国スタンフォード大学のスコット・ウィルターマスは、3人組のグループをいくつか作らせ、キャンパスの周囲を歩いてもらう、という和やかな実験をしたことがあります。ただし、あるグループには「手の振りや、歩調などを合わせて歩いてきて」とお願いして、残りのグループには「3人で普通に歩いてきて」と伝えました。 散歩が終わったところで、それぞれのグループに、協力して行うゲームをしてもらいました。 すると、歩調を合わせて歩いたグループのほうが、協力が増えることがわかりました。歩調を合わせて歩いていると、シンクロニーが高まり互いに協力するようになったのです。 次にウィルターマスは、それぞれのグループに一緒に歌を歌ってもらいました。それでもやはり、歩調を合わせて歩いたグループではより協力行動が見られました。私たちは、どうやら同じ動作をしていれば、一体感が高まるみたいです。 ラジオ体操では、まさにみんなで同じ動作をします。ウィルターマスの実験で見られたように、協力行動が増えることが予想されるのです。 「どうも、うちのチームはみんなギスギスしている」「うちの社員は、お互いに挨拶もしない」「普段、うちの職場は静まり返っていて、ほとんど会話もない」もし、そんな悩みを抱えているのなら、だまされたと思って朝のラジオ体操を取り入れてみてください。 最初は、みんなイヤイヤ行うかもしれません。でも、そのうち一緒に身体を動かすことが楽しくなり、仲間意識も芽生えてきます。よい影響があるのです。 もし社歌があるのなら、みんなで歌うのもいいと思います。そうやって同じ行動を取っていれば、間違いなく仲良くなれます。
内藤誼人(心理学者、立正大学客員教授)