【丸の内Insight】セブン買収提案が迫る日本企業の変革-2025年展望
この数年間で日本の株価が上昇し、アクティビストも容易にはアップサイドが取れなくなっています。オペレーショナル・アクティビズムは難易度が高く時間もかかりますが、事業面にまで踏み込めば高い企業価値の実現が可能と見込まれた企業は、時価総額が大きく、株価が多少割高でも今後ターゲットになっていくとみられます。
展望3:メガバンクと損保に迫る「政策株の崖」
24年に顕著だったのが、雪崩を打ったかのような政策保有株式の売却ラッシュでした。岩盤と目されていたトヨタ自動車が持ち合い株解消に一歩を踏み出したことで、大きな流れになりました。これを受けて政策株を大量保有しているメガバンクや損害保険会社は収益を大きく伸ばしました。
三菱UFJフィナンシャル・グループなど3メガバンクグループが24年4ー9月期決算で計上した株式売却益は総額約7000億円。前年同期よりも約5000億円増えました。各グループは政策株の売却ピッチを上げ、最長4年以内に株式残高を純資産の20%以内に引き下げる計画です。東京海上ホールディングスなど損保3社も同期決算で、合わせて約1兆300億円の売却益を計上しました。損保各社は今後6-7年で、全ての政策株を売り切る計画です。
政策株の崖
政策株の時価は株価上昇で膨れ上がっており、足元で簿価の2.5倍程度に達しています。売却による利益計上は年間2000億-3000億円程度が見込まれますが、向こう5年程度でその効果は失われることになります。あるメガバンク役員はこれを「政策株の崖」と評しました。大幅な利益の剥落に備えて新たな収益源をつくることができるのかどうか。今後、売却で得た資金をどのように活用するのかが課題となります。
もちろん、株主還元に相当の金額を投じる見通しですが、各社が狙うのは、国内外での買収です。しかし、収益性のある案件の発掘は至難の業です。インオーガニック戦略(提携や買収)の収益貢献には相応の年月が必要であることを考えれば、残された時間はそれほど多くはありません。一方で、買い急いだ結果、巨額減損に見舞われるリスクも付きまといます。財務規律を働かせながら、大胆な手を打てるのか。緻密さと胆力が同時に問われる局面となりそうです。