【丸の内Insight】セブン買収提案が迫る日本企業の変革-2025年展望
このような流れを見ると、25年は国内大手企業が成長に向けたグローバル展開を本気で始める大きな節目の年になる可能性があります。
同意なき買収
もちろん、日本企業は海外だけで活発に動くわけではないでしょう。国内の業界再編の機運も一段と高まっているようです。24年は、従来はタブーとされてきた「同意なき買収提案」によるM&A(合併・買収)が一気に噴き出した年となりました。
第一生命ホールディングスが福利厚生サービスを手掛けるベネフィット・ワンの買収を成就させ、実現はしなかったものの事務機器業界ではブラザー工業がローランドDGに、物流業界ではAZ-COM丸和ホールディングスがC&Fロジホールディングスに、それぞれ「同意なき買収」を仕掛けました。12月に入ってニデックが工作機械の牧野フライス製作所にTOB(株式公開買い付け)の実施を発表しましたが、事前協議は申し入れておらず、「同意なき買収」の形となっています。
23年に経済産業省が「企業買収における行動指針」を発表し、こうした買収にお墨付きを与えたことが転換点になっています。
複数の投資銀行幹部は、パイプラインに「同意なき買収」案件が多数入っていると話しており、この動きは今年も勢いを増すでしょう。
グローバル企業が虎視眈々と日本企業を狙う流れも続きそうです。クシュタールはもとより、日産自動車とホンダが経営統合に踏み出した背景には、台湾の電子機器受託製造サービス大手鴻海精密工業による買収提案があったことが明らかになっています。外資系投資銀行幹部は、中国の地政学リスクを背景に日本企業への注目度は上がっているとし、買収に関する相談も絶えないと語りました。
ただ、セブン&アイのケースは創業者による防衛的なMBO(経営陣が参加する買収)が模索されており、同社の特別委員会の判断や、外国企業による国内企業の買収を規制する外為法の運用について、日本企業が実際にどこまでグローバルに開かれているのかが試される機会として多くの海外企業が注目しています。