渋谷・築地・浜松町…「東京」大規模再開発、エリアの特色を探る
浜松町 広場に大名屋敷の面影
増上寺の門前町として江戸時代に観光の中心的役割を果たし、明治期には迎賓館で国内外の賓客を歓待した浜松町。現在、世界貿易センタービルディング(東京都港区)、鹿島、東京モノレール(同港区)、JR東日本による「世界貿易センタービルディング本館・ターミナル」の建て替えプロジェクトが、27年の開業に向けて進行中だ。 荒川和樹世界貿易センタービルディング開発企画部次長が「おもてなしの精神を継承し、推進していく」と話すように、これまでの歴史を踏まえ、さまざまな仕掛けを計画している。その一つがターミナル7階の屋上広場。かつてこの地にあった大名屋敷・庭園の池泉形状をオマージュした大芝生広場を配置する。 本館2階には、日本各地の新たな魅力や楽しみ方を、インバウンドや国内旅行者に発信する「観光プレ体験施設」を整備。日本各地の魅力を紹介し、現地への訪問意欲の喚起を図る。
芝浦 舟運活用し都心・湾岸つなぐ
「水辺の可能性を生かしつつ、ベイエリアと都心部をつなぐ街にする」。野村不動産の松尾大作社長は、JR東日本と共同で推進している芝浦の再開発プロジェクトの街区名称を「BLUE FRONT SHIBAURA(ブルーフロント芝浦)」に決めた背景をこう説明する。 街づくりのポイントと言えるのが、新たな交通手段として期待されている舟運の活用。都内有数の舟運ターミナル「日の出ふ頭」や、芝浦エリアを流れる「芝浦運河」に近接する特性を生かし、船着き場の整備や舟運の新航路開拓などを進めていく。 SとNの2棟のうち、S棟の高層階には日本初進出のラグジュアリーホテル「フェアモント東京」が25年度に開業。運河に船着き場を設け、ホテルの専用船によるクルージングサービスを提供する。また飲食店などが入る低層部には水辺に面したバルコニーや緑に囲まれたテラスなどを設け、自然を感じられる空間とする計画だ。
築地 市場跡地にスタジアム
食の街「築地」の市場跡地を再開発する「築地地区まちづくり事業」。同事業を手がけるのは三井不動産を代表企業とする計11社の企業グループだ。 三井不動産の植田俊社長が「東京や日本の国際競争力を左右する重要なプロジェクト」と強調するように、総事業費が約9000億円に達する同事業の提案内容は盛りだくさん。38年までの全面開業に向け、約19万平方メートルの広大な敷地にあらゆる施設を建設する。 特に注目を集めるのが、約5万人を収容する屋内全天候型の多目的スタジアム。可動席と仮設席を組み合わせ、客席やフィールドの形状を用途に応じて変えられる。野球やサッカー、バスケットなどのスポーツに加えて、音楽イベントや展示会での利用も想定している。 もう一つの目玉が、築地場外市場との連携や食文化の発展を促すイノベーション拠点「築地クリナリーセンター」。日本の食文化や「築地ブランド」を発信する機能を担う。