なぜメジャー挑戦を決めた鈴木誠也は早くもFA市場で高評価されているのか…4年約79億円の値段が付く理由と懸念材料
カステヤノス、コンフォートを除いた選手の年俸は、プロスポーツの年俸などのデータベースを提供している「SPOTRAC」が、シュワーバーの市場価値を1年約1300万ドル(約14億8200万円)と弾き出しており、1000~1500万ドル(約11億4000万円~約17億円)と見込まれる。契約総額にして3年3000万ドル(約34億2000万円)から4500万ドル(約51億3000万円)の範囲か。 鈴木の評価は彼らよりも上なので、先ほどの4年総額7000万ドル(約79億8000万円)、年平均1750万ドル(約19億9500万円)プラス1年のチームオプションという数字は妥当に映る。前出のスカウトの予想も似たような額で、「5年目を保証するかどうかが、分かれ目になるのでは」と推測した。仮に4年総額7000万ドル(約79億8000万円)だとしたら、広島への譲渡金は、最初の2500万ドル(約28億5000万円)までが20%、次の2500万ドルまでが17.5%、5000万ドル(約57億円)以上は15%なので1230万ドル(約14億円)。出来高などは含んでいないが、この程度なら、二の足を踏むような額ではない。鈴木の場合、ドラフト指名権をあきらめる必要もない。 一方、懸念材料が2つある。 それは鈴木に関することではなく、まずは12月1日に現在の労使協定が切れること。FAになる年数や一定の年俸総額を超えた場合にかかるぜいたく税の設定などについて交渉の難航が予想されており、現時点では合意が見えていない。ある程度ゴールが見えないと、チームは動きづらい。また実は、現行の日米間で結ばれているポスティングシステムは10月31日で失効している。ポスティングで移籍するには、新しいルールの合意が必要となる。ちょうど田中将大(楽天)が2014年に移籍する際にもポスティング制度が失効していたことから手続きができず、契約は1月22日までずれ込んだ。大谷翔平(エンゼルス)ときも失効していたが、それまでの制度が1年延長され、その後、現在の制度で合意した。今回もどちらかから改正の申し入れがない限り1年の延長は可能だが、日本側にしてみれば、もう少し譲渡金アップを目指したいところではないか。広島は早ければ来週中にもポスティングを申請するそうだが、今後の交渉において労使交渉、失効しているポスティング制度に翻弄される可能性は否定できない。評価が高く、契約総額も、それなりとなりそうだが、合意までの道のりは時間を要するかも知れない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)