「妊婦が女性じゃないなんて」と猛反発も……ウィーンの新「優先席ピクトグラム」が大炎上した背景
◆ジェンダー中立の妊婦ピクトグラムはありか?
今回もっとも議論の対象となったのは、妊婦のピクトグラムでしょう。 というのも、以前のピクトグラムには描写されていた「ボブヘア・胸のふくらみ・スカート」といった女性らしさが完全に消え去り、おなかが大きいだけの性別不明瞭なデザインとなったからです。これには、 「「妊婦が女性として描かれないことに憤りを感じる」 「女性が社会から排除されていく新たな例」 「男性の姿が再び標準とみなされ、女性が再びそこに含まれるのは原点回帰」」 と猛反発が巻き起こりました。 さらにそれに対して、 「「胸のない妊婦だっている。妊娠中のトランスジェンダー男性(※2)とか」 「胸が大きいことが女性の定義? 小さな人は女性ではないの?」 「胸がないからと言って男性と決めつけるな。ペニスの膨らみも描写されていない」 「スカートが女性の特徴というなら、スコットランド人男性(※3)はどうなんだ」 ※2:出生時は女性、性自認は男性の人 ※3:スコットランド人男性はスカート状の民族衣装を着用」 と性の先入観に物申す声や、 「「乳房、長髪、スカートといった典型的な女性の要素が取り除かれ、余分な装飾のない、ジェンダーに適した一般形式になっただけ」」 とジェンダー中立を擁護する意見、 「「ジェンダー信奉者はトラブルを欲してやまない」」 とジェンダー論自体への不快感といった反論も相次いでいました。
◆先行するウィーンのLGBTQピクトグラム「カップル信号機」
ウィーンの代表的なピクトグラムとして想起するのが、2015年の「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」と「ライフ・ボール(命の舞踏会)」の2大イベントを機に誕生した、世界初の「カップル信号機」です。 これはレズビアン、ゲイ、ヘテロセクシュアル(異性愛者)の3種類のカップルがそれぞれ赤信号と青信号に描かれたもので、いずれもペアが仲良く手を繋いだり肩を組んだりしているのが印象的です。 この信号機の導入時には、オーストリア代表の「ひげ美女コンチータ」がユーロビジョン・ソング・コンテスト優勝者として世間を席巻していたことや、ライフ・ボールがHIV感染者およびエイズ患者を支援するヨーロッパ最大のチャリティイベントという背景とも相まって、LGBTQ機運がかつてないほど高まっており、「圧倒的に好意的な反響をもって迎え入れられた」と、当時のマリア・ヴァシラコウ副市長は述べています。 それ以前でも、2007年導入のウィーン公共交通機関の優先席ピクトグラムには「幼児連れ女性」に代わり「幼児連れ男性」が新規採用されていましたし、オーストリア航空では20年以上も前から女性の客室乗務員にパンツの制服を用意するなど、その先進的なジェンダー平等性にはかねてより目を見張るものがありました。 そんな多様性にあふれていてリベラルだったはずのウィーンで、新しい優先席ピクトグラムはなぜ大炎上したのでしょうか。