蘇った闘争心…なぜ渋野日向子は2年ぶりとなる涙の復活Vを果たせたのか…「2年前の自分より強くなれる」
10番でボギーを叩いた直後の11番(パー5)はピンまで残り60ヤードの3打目を58度のウエッジでピンそばにピタリとつけて、バーディー。そこから猛チャージを開始し、最終18番(パー5)のバーディーで首位に並び、史上8人目のアマチュア優勝を狙った佐藤心結(18、茨城・明秀学園日立高3年)と木村彩子(25、富山常備薬グループ)、ペ・ソンウ(27、韓国)とのプレーオフに持ち込んだ。 プレーオフは18番で行われたが、この日の渋野は18番を3度とも完璧に攻略した。正規の18番は残り95ヤードの3打目を52度のウエッジでピン手前1メートルにつけ、プレーオフ1ホール目は残り88ヤードの3打目を54度のウエッジでベタピンのバーディー、プレーオフ2ホール目は残り108ヤードの3打目を今度は46度のウエッジでピンそば1.5メートルにつけてのバーディーだった。 「18番が3回ともバーディーはうれしい。プレーオフでもうまく打てた。ウエッジを4本入れて、1ヤード、2ヤード刻みで打つ練習をしてきた成果かなと思う。最近はドライバーをしっかり振れるようになって、距離も出るようになった。パー4でウエッジで打てる距離にドライバーショットを置けるようになったのが大きいと思う」 米ツアーへの本格参戦を表明した2020年は飛距離の違い、グリーン周りなどのアプローチの技術の違いを痛感した。秋には長年師事してきた青木翔コーチから離れ、この1年は国内ツアーでも4勝を挙げた2019年の自分と決別した。試行錯誤を繰り返す間、結果を残せない渋野にネットでは心無い声が飛び交った。「スイング改造が失敗」との批判もあった。それらの雑音を封じるために、どうしても欲しかった優勝という結果。会見の終盤には、ようやく渋野の本心を聞くこともできた。 「嫌でも入ってきますよね。新しいスイングで勝ったときに、ああじゃ、こうじゃと言うとった人を、言葉は悪いけど見返したいと思った。そういう気持ちを頭の片隅に置きながらやっていました」 自分を信じ続けることで手にした1年11カ月ぶりの優勝。同時に「2019年の自分も受け入れ、それを含めて改善しないといけないと思うようになっていた。それが混じって今の自分がある。6月の全米女子プロくらいかな。そう思うようになったのは」と話したように、自分自身への呪縛のような思いからも解放されたからこその頂点だった。 「今やっていることをもっとやっていけば、2年前の自分より強くなれるかなという感じです」
来季からの米ツアー本格参戦を懸けた最終予選会(Qスクール)まで、あと1カ月半余り。 ここにターゲットをおいて、大幅なスイング改造を進めてきた渋野は、国内ツアーで勝てないという葛藤との戦いがあった。渋野自身も「こんなに早く優勝できるとは…」と語ったが、その壁をこれだけの短期間で乗り越えたのは、やはり渋野がただのゴルファーではない証拠なのかもしれない。今週は2週連続Vを狙い15日からの「富士通レディース」(千葉・東急セブンハンドレッドクラブ)に挑む予定だ。