思春期には白杖を持つことに葛藤も…視覚障害者・白杖ガールが発信し続ける“心のバリアフリー”「物理的なバリアフリーは誰かのバリアになる」
◆思春期には持ちたくないとも…“白杖=視覚障害のマーク”は決してネガティブなことばかりではない
──白杖を積極的に持つメリットとは? 【杉本梢さん】 自分が歩きやすいのはもちろんですが、周りの方の安全に繋がるのも白杖の役割です。目が見えにくいとどうしても俯いて歩きがちだったり、人にぶつかることもあります。人混みで「邪魔だ」と怒鳴られたこともありました。ただその方も私が視覚障害だとわかっていたら、怒鳴らずに済んでいたと思うんですね。白杖を持っていることで人の優しさにもたくさん気づきますし、“視覚障害のマーク”は決してネガティブなことばかりじゃないんです。 ──逆に白杖を持っていることで、心無い声をかけられることはないですか? 【杉本梢さん】 白杖で地面をコツコツ叩く音が「うるさい」と言われるのは、実は“白杖ユーザーあるある”だったりします。音を立てるのは自分の存在を知らせたり、周囲の様子を知るためなのですが、こうした白杖の役割、あるいは“白杖=視覚障害者”ということをご存知ない方も意外とたくさんいるのだと思います。でもそれは必ずしも学校で習うわけでもないですし、教えてくれなければわからないですよね。 ──だからこそ“白杖ガール”としてYouTubeやTikTokで積極的に発信しているわけですね。 【杉本梢さん】 はい。当事者は、「周りに自分が何に困っているのか?」を伝えることを、「迷惑をかけてしまうのではないのか?」と躊躇してしまう人が、とても多いです。一方、「障害者が困っているならサポートしたい」と思っている方もたくさんいます。だけど何に困っているのかがわからなければ、何もできないですよね。そこをお互いに理解すること、そのための対話がとても大事だと思っていて、私が動画発信する理由もその1つの手段です。 ──町で白杖を使っている人を見かけたら、どのようなサポートをするのがベストですか? 【杉本梢さん】 白杖を持って1人で歩いているということは、ある程度の1人歩きスキルがあるはずなので、まずは見守って、大丈夫そうならそのまま素通りしてください。この「見守りサポート」があるからこそ、明らかに大丈夫そうじゃない状況──キョロキョロ周りを見渡していたり、道路に出て危ないといったことにも気づけるわけで、実は大きなサポートになっています。 ──視覚障害者のためのバリアフリー設備として、昔から普及しているのが音響式信号です。しかし昨今は近隣住民からの騒音の苦情もあり、全国8割の音響式信号機が音の稼働時間を制限したり、音を小さくしているという調査もあります。実際、音響式信号はないと困るものですか? 【杉本梢さん】 難しいですよね。視覚に障害がある人にとって、音響式信号は町の交通安全のためにもなくてはならないものです。ただ騒音の“お困り度”も人それぞれで、なかには聴覚過敏の特性を持つ発達障害者の方もいます。また視覚障害者にとっては、大切なバリアフリー設備となっている点字ブロックも、車椅子ユーザーには“バリア”になってしまっているという声もあります。