思春期には白杖を持つことに葛藤も…視覚障害者・白杖ガールが発信し続ける“心のバリアフリー”「物理的なバリアフリーは誰かのバリアになる」
先天性の視覚障害者の杉本梢さんは、特注のコンタクトをして最大視力0.09の弱視。視覚障害についての「なるほど」と思える情報をSNSやYouTube、TikTokなどで積極的に発信する彼女は、身近なテーマを取り上げ、多くの視聴者に気づきを与えている。特別支援学校の教員を経て、現在は一般社団法人「日本心のバリアフリー協会」の代表理事を務める彼女が伝えたい、物理的なバリアフリーを越えられる「心のバリアフリー」について聞いた。 【写真】笑顔が素敵! こちらに微笑む明るく活発的な杉本梢さん ◆自治体によって異なる条件のある盲導犬、迎えられたら心強いなと思うことはある ──杉本さんの現在の視覚の症状について教えていただけますか。 【杉本梢さん】 私は先天性の弱視なのですが、具体的な診断名をつけるのは医師でも難しく、直近の診断では「黄斑部の異常」とされています。目を酷使しすぎると失明リスクもあると言われているので、なるべく大切に管理しながら、それでもアクティブに過ごしている方だと思います。 ──お仕事の出張や旅行なども1人でされるそうですね。 【杉本梢さん】 はい。視覚障害者の歩行をサポートする白い杖、白杖(はくじょう)が私の頼もしいパートナーです。 ──盲導犬をパートナーとする視覚障害者もいますが、なぜ白杖を選択されたのですか? 【杉本梢さん】 盲導犬をお迎えするにはさまざまな条件があり、おおむね“見えにくさ”の程度が重い方が優先されます。条件は自治体によって異なるのですが、私の住む北海道では、私の障害等級は対象外となっています。 ──もし条件に合えば、盲導犬をお迎えしたいですか? 【杉本梢さん】 盲導犬は頭数も限られていますし、お迎えが難しい理由も十分理解しています。ただ、盲導犬の目を借りられたら心強いなと思うことはあります。私の目はまぶしいとより見えにくくなる特性があり、特に冬は雪の反射で目の前がまったく見えなくなることもあります。また点字ブロックが雪で覆われてしまい、冬は外出困難になる要因が多々あります。 ──白杖を使い始めたのはいつ頃からですか? 【杉本梢さん】 小学生の頃から使ってはいるのですが、思春期の頃は周りの目が気になって「なるべく持ちたくないな」と思っていました。“白杖=視覚障害のマーク”になってしまうことに抵抗感を持つ当事者は少なくないんです。私自身は社会人になり、特別支援学校の教員(2007年より11年勤務)として子どもたちの引率などをするため「白杖が必須」になりました。さらにその時期を経て、いまでは「白杖を積極的に持ちたい」という認識に変わっています。