エイドリアン・ニューウェイのアストンマーティンF1加入は、どう決まったのか?:その時系列を追う
6月:ニューウェイ、アストンマーティンのファクトリー訪問。感銘を受ける
ニューウェイはこの段階では、F1に残るかどうかをまだ決めかねていた。しかしエディ・ジョーダン率いる彼のスタッフは、フェラーリやアストンマーティンとの協議をしっかりと重ねていた。 そのニューウェイがF1に残ることを決めたのは、6月下旬のことだった。彼はこう言った。 「人間と機械のスポーツで頂点は何か? 明らかにそれはF1だ。だから、アメリカズカップに興味があるし、他にも色々と興味があることはあるが、人間と機械のスポーツをやるなら、人々が私のことを望んでくれるかぎり、頂点に居続けた方がいいと思った」 この頃ニューウェイは、アストンマーティンの新ファクトリーを案内されておいた。建物の一部は1年前に完成したばかり、ふたつ目と3つ目の施設は、完成間近だった。そしてそれらを見学したニューウェイは、新ファクトリーの規模だけではなくそのレイアウト、新施設への資金提供におけるチームへの「ローレンス・ストロールの献身の証明」にも感銘を受けた。新しい風洞の基礎を作るという点でチームを手伝う機会は、間違いなく興味をそそるものだった。 「とても大きな意味のあることだったと思う」 ローレンス・ストロールは、このニューウェイの訪問について語った。 「実際に訪れなければ、3つの素晴らしい建物を理解したり、説明したりするのは難しい。これは我々がチャンピオンチームになるためのツールの、非常に大きな部分を占めている。古いツールでは、チャンピオンになれなかっただろうからね。我々の意図、そして勝利への野望を示すためには、これらを作り上げなければいけなかった。だから、エイドリアンをここに連れてくることは極めて重要だった」
7月および8月:噂の沈静化。そしてRB17の最終仕上げへ
アストンマーティンの新ファクトリーを見学したニューウェイの心は、この頃すでに決まっていた。なにより、フェラーリはアストンマーティンと同じような情熱を提供できなかったことで、ニューウェイの選択肢はほぼ一択になりつつあった。しかしレッドブルとニューウェイの契約により、決定は9月まで発表されることはなかった。 それと並行してアストンマーティンは、アンディ・コーウェルをCEOとして、エンリコ・カルディールをチーフ・テクニカルオフィサーとしてチームに迎え入れた。 一方でニューウェイは、ハイパーカー”RB17”に関する任務で忙しく、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、車両の初披露も行なわれた。ただまだRB17は完成したわけではなく、生産段階に入ったばかり。走行テストを行なった後にもさらに作業が続く予定だった。 レースウィークエンドにはドライバーからのフィードバックに取り組み、チームを支援。50台生産される予定のRB17の顧客を探していた。