樋口恵子×下重暁子 平均して男性9年、女性12年の「寝たきり期間」があるって本当?実はかなり曖昧な<健康寿命>の定義を考えてみる
総務省統計局が令和6年9月に公開した「統計からみた我が国の高齢者」によると、65歳以上の人口は3625万人と過去最多だったそう。高齢化が進むなか、92歳の評論家・樋口恵子さんと88歳の作家・下重暁子さんは「女性は75歳を過ぎると、医療のお世話になることがぐんと増える。75歳が老いの分かれ目」と語っています。そこで今回は、お二人の共著『90前後で、女性はこう変わる』から一部を、お二人の対談形式でお届けします。 【写真】樋口恵子さん * * * * * * * ◆「女性は12年も寝たきりになる」は本当? 必要以上に不安にならない 下重 近年、「健康寿命を延ばそう」などとよく言われますよね。健康寿命って、そもそもなんですか? 樋口 「健康寿命」とはなんなのか、よく人から聞かれますが、私もなかなか正確には答えられませんでした。厚生労働省によると、「日常生活が制限されることなく生活できる期間」の平均年齢とのことです。 ちなみに2023年に厚生労働省から発表された男性の平均寿命は81歳、女性は87歳。平均寿命から健康寿命を差し引いた年数、つまり日常生活が制限される年数は、男性9年、女性12年と言われています。 下重 女性は12年間も日常生活が制限された生活を送っているの? 本当かしら。世間一般には「寝たきり期間」なんて言われていますが、にわかには信じがたいですね。
◆「健康寿命」はかなり曖昧 樋口 おっしゃるように、なにをもってして健康寿命と言うのかが難しい。最近、高齢医療に詳しい医師の和田秀樹さんから、「健康寿命」というのはかなり曖昧なものだと聞きました。 厚労省がいうところの「健康寿命」の算出はアンケートがもとになっているようで、全国から無作為で選ばれた男女に「あなたは現在、健康上の問題で日常生活になにか影響がありますか?」という質問をするそうです。 下重 ということは、なにをもってして「日常生活に影響」と考えるかは、主観的であり、恣意的なんですね。だいたい歳をとれば、どこかしらに支障は出てくるものです。 樋口 おっしゃる通り! 「血圧が高めなので食事の際、塩分を控えている」とか「薬を飲んでいる」という方も、「日常生活に影響がある」と答える場合があるわけですから。
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