「誰もが被害者にも加害者にもなる」ビジャレアル・佐伯夕利子氏に聞く、ハラスメント予防策
スポーツハラスメントZERO協会が描く未来図とは?
――佐伯さんが理事を務めるスポーツハラスメントZERO協会は、日本でも世界のスタンダードが根づくような流れを生み出そうとしているのですね。改めて、今後の展望について教えてください。 佐伯:アドバイザーに加わっていただいた日本バドミントン協会代表理事兼会長の村井満さんが「スポーツハラスメント検定」の初回を受けてくださった後に、メールでうれしい言葉をくださいました。「全スポーツのNF(特定のスポーツ競技を国内で統括する中央競技団体)の方や会長に、こうした学習を進めてほしい」と。その言葉通り、私たちも「人の概念形成は学習から」ということを信じ続けて、啓発活動や検定事業を地道に続けていくことで人々の概念が変わり、基準が変わっていくように根気強く活動していきたいと思います。そして、私たちのスポーツハラスメントZERO協会が目指すのは「解散すること」です。スポーツハラスメントがなくなれば、私たちのような組織は不要な存在になります。だからこそ、私たちは1日も早く解散宣言できることを望んでいるし、そのために活動を続けていきます。 ――佐伯さんご自身の展望も教えてください。 佐伯:私自身、ハラスメントを防ぐためには健全な概念形成が本質だと思っています。学習・検定事業を通して、それを実現していきたいと思いますし、活動を地道に続けていきたいですね。基準が変わらなければ、日本のスポーツ文化は土壌が枯れた状態でアスリートが過ごしていくことになってしまうと思うので、土壌を健康なものに改良して、スポーツ界の発展に寄与できればと思っています。 <了>
[PROFILE] 佐伯夕利子(さえき・ゆりこ) 1973年10月6日、イラン・テヘラン生まれ。2003年スペイン男子3部リーグ所属のプエルタ・ボニータで女性初の監督就任。04年アトレティコ・マドリード女子監督や普及育成副部長等を務めた。07年バレンシアCFでトップチームを司る強化執行部のセクレタリーに就任。「ニューズウィーク日本版」で、「世界が認めた日本人女性100人」にノミネートされる。08年ビジャレアルCFと契約、男子U-19コーチやレディーストップチーム監督を歴任、12年女子部統括責任者に。18~22 年Jリーグ特任理事、常勤理事、WEリーグ理事等を務める。24年からはスポーツハラスメントZERO協会理事に就任。スペインサッカー協会ナショナルライセンスレベル3、UEFA Pro ライセンス。2024年3月に、スポーツにおけるハラスメントゼロを目指して「スポーツハラスメントZERO協会」を創設。理事として名を連ね、精力的に活動を続けている。
インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]