「誰もが被害者にも加害者にもなる」ビジャレアル・佐伯夕利子氏に聞く、ハラスメント予防策
ビジネスにも通じる意外と無自覚な“ハラスメント”言動
――日常の中で、ハラスメントにつながりやすい、気をつけるべき言葉はありますか? 佐伯:意外と無自覚な人が多いと思うのですが、その人から発される言葉の選択を見ているとわかることがあります。私の実体験では、「これやらせておきます」と言って本当にやらせてしまう人は、ハラスメント体質に陥る傾向があると感じます。他にも、傾向として「他者をコントロールしようという傾向が強い」、「相手に対して嫌味を言うようなトーンで発言する」ことなどが挙げられます。そういう言葉を発した時に高揚感や全能感に似た感情を覚える人は、気をつけたほうがいいですし、一つ一つの言葉の選択を含めて指導者や権威者は「自分がどうなのか?」、常に顧みる努力をしなければいけないと思います。 ――行動の面で気をつけたほうがいいことはありますか? 佐伯:相手が子どもでも大人でも、「これをするな」と禁止事項を設けて機会や権利を奪い、罰する人は気をつけたほうがいいと思います。罰則として坊主や腕立て伏せを強要したり、「お前は遅れてきたからこれをやっておけ」といった罰則で組織集合体をマネジメントしようとする人は、他にもやり方があるので、一度立ち止まって考えてみたほうがいいと思います。また、権威に対して従順な人、ヒエラルキーに忠実な人は、「リスペクトがある素晴らしい人」のように見られがちですが、立場や役割が変わった時には威圧的な権威者になりやすい傾向があります。個人的には、迎合せず、ニュートラルな立場を保てる人ほどハラスメントとは無縁でいられるのではないかと感じています。 ――自分のキャリアの中で無意識に正しいと思ってきた価値観を、もう一度見直す必要がありそうですね。 佐伯:そうですね。狭い世界観で生きてきた人は、自分が知っている領域だけで物事を判断するので、ハラスメントに陥りやすい傾向があると思います。また、伝統とか習慣を盲目的に重んじる人も気をつけた方がいいです。「お父さんが怒るからそれはやめなさい」とか、「親の言うとおりにしなさい」とか、「俺/私の言う通りにしとけば間違いないんだ」と言われるような家庭で育ってきた人は、自分の意見や感情を尊重されてきていないので、立場が上になった時には同じように権威に従わせるやり方で統率しようとする可能性は高まると思いますから。