はやぶさ2の歴史的快挙 アクシデントも乗り越えた、徹底した計算と訓練
2020年12月6日、小惑星探査機「はやぶさ2」から放出されたカプセルが地球に届いた。地球から3億km以上離れた小惑星リュウグウの岩石などを採取する国家プロジェクトの総仕上げは、オーストラリアでのカプセル回収。だが、予期せぬアクシデントも発生した。はやぶさ2プロジェクトを振り返り、カプセル回収までの舞台裏に迫った。(取材・文/科学ライター・荒舩良孝/Yahoo!ニュース 特集編集部)
赤い大地に広がる白いパラシュート
12月6日、日本時間の午前2時29分。オーストラリアの中央南部で大きな“流れ星”が観測された。その正体は小惑星探査機「はやぶさ2」から放出されたカプセル。午前2時54分、オーストラリア国防省が管理するウーメラ管理区域の中に着地した。 カプセルから発信されるビーコン信号などで着地場所が割り出されると、回収役として現地に待機していた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の澤田弘崇さんは、ヘリコプターですぐに向かった。 しかし、現場は夜明け前だったため、カプセルを目視で確認することがなかなかできなかった。澤田さんが振り返る。 「あたりが真っ暗で、サーチライトを照らしてもよく見えず、苦労しました」
ウーメラの本部で待機していた回収班のリーダーであるJAXAの中澤暁さんも、ヘリコプターからはっきりしない報告が続き、やきもきしていたという。 ヘリが現場上空で旋回を続けていると、朝日が昇ってきた。明るくなってくるにつれて、地表の様子が見えてきた。澤田さんはついに赤い大地の中に白いパラシュートを発見した。 「カメラをズームアップしてみたら、パラシュートの横にカプセルらしきものが確認できた。見つかったと確信しました」 ウーメラの大地に直径40cmのカプセルが着地していた。カプセルは、大気圏突入の際に熱を遮断するカバーの部分が外れ、内部のモジュールがむきだしになっていた。回収班は、カプセルに火薬が残っていて爆発することがないかを確認した後で輸送ボックスに入れ、ウーメラ本部のクリーンルームへ運んだ。澤田さんはカプセルと対面したときの感想をこう語った。 「6年前に実際に見ていたモジュールが、(宇宙を旅して)目の前にあるというのが不思議な感じでした。一瞬、呆然としたというか、本当に帰ってきたんだと思いました。カプセル内部の金属はまったく変わっていなかったのも不思議でしたね」