はやぶさ2の歴史的快挙 アクシデントも乗り越えた、徹底した計算と訓練
人工クレーター作製と2回のタッチダウン
6年間の旅を経て、はやぶさ2が地球に戻ってきた。総飛行距離は52億4000万km。この旅では地球から3億km以上離れた小惑星まで飛行し、同じ天体の二つの場所で着陸(タッチダウン)に成功。加えて、人工的なクレーター作製や地下の岩石(サンプル)の採取の成功など、七つの世界初を実現した。 はやぶさ2は、2010年6月に地球に帰還した初代「はやぶさ」の後継機にあたる。はやぶさは一時行方不明になりながらも、ケイ素が豊富な小惑星イトカワのサンプルを採取して地球に戻ってきた。日本で宇宙研究を推進するJAXAは、この成功に後押しされるように、2011年5月に「はやぶさ2プロジェクト」を正式に発足させた。3年半という短い期間で試験や製作が進められ、2014年12月3日にH2Aロケットで打ち上げられた。 はやぶさ2が探査したリュウグウは、直径約900mのコマのような形をした真っ黒な小惑星だ。事前の観測から、炭素や水が豊富に含まれることが見込まれていた。その岩石を地球に持ち帰って分析すれば、太陽系初期がよりわかり、生命を構成する有機物や地球の水がどこから来たのかに迫れると期待されている。
リュウグウでの探査で最も困難だったのが、タッチダウンだ。たくさんの岩塊で覆われたリュウグウは、はやぶさ2の着地を拒むかのようだった。 1回目のタッチダウンは2019年2月22日に実施されることになった。目標となったのは直径6mほどの小さな領域。プロジェクトメンバーは、事前に入手したリュウグウの詳しい地形データをもとにはやぶさ2を精密に誘導していき、誤差1mという高い精度でタッチダウンに成功した。 4月5日には、搭載していた小型衝突装置を使ってリュウグウの表面に人工クレーターをつくることに挑戦した。まず、はやぶさ2はリュウグウの上空で小型衝突装置を分離し、その位置に装置を残したうえで、安全な場所に移動。分離から40分後、装置の内部にある爆薬を遠隔操作で爆発させる。すると、装置の底面にある直径30cm、重さ2kgの銅版が弾丸状に変形し、秒速2kmでリュウグウの表面に衝突する。はやぶさ2は狙った地点に見事に衝突させ、地表の岩石が砕け、直径約15mの人工クレーターを出現させることに成功した。