ママと区議のタッグで学童への弁当宅配が可能に――子育て行政に変化を促す「ママインターン」とは?
月に1回ぐらいの頻度で勉強会を開催することもある。インターンの誰かが「このテーマでやりたい」と手をあげる。 「台東区では今年の1月から当面の間、区立小中学校の給食費が無償になったので、その勉強会も(本目さんに)していただきました。『無償になった、ラッキー』で終わるのではなくて、可能になった経緯や予算の話を知ることができておもしろかったです」 ママインターンを始めてから見つけた楽しみが、区議会の映像を見ることだ。台東区は本会議をはじめ、予算特別委員会や保健福祉委員会などの委員会を録画してYouTubeで公開している。 「子どもの教育や福祉に関わるものを選んで見ています。区議会って国会よりシビアで、『異次元の』なんてふんわりしたことを言ったらすぐ突っ込まれる。『この人はなぜこの問題に熱を入れているのだろう?』とその議員さんの背景が気になったりすることもあります。議会の傍聴がこんなに楽しいなんて思ってもみませんでしたが、それはやっぱり本目さんを通じて区政が身近になったからだと思います」
「赤ちゃん訪問の保健師さん、女性じゃなきゃダメ?」チャットで気軽に意見を聞くことができる
小林さんはもともと政治への参加意識を強く持っていた。一番上の子が小さかったころ、当時住んでいた地域で子どもに関わる仕事をしたのをきっかけに、相対的貧困や社会的養護が必要な子どもたちの実情を学び、子どもたちの未来を考え始めた。 「どんな親も、自分の子どもが生きやすくなるように教育にお金をかけたりすると思うんですが、社会全体として見たときに、それだけでいいのかなと思ったんですよね。少なくとも私は、格差が大きい社会ではなく、みんながある程度幸せで、がんばったら報われる社会を残したいという気持ちがありました」 本目さんのブログで「ママインターン募集」を見つけたのは2020年1月ごろ。まもなく、新型コロナウイルス感染症が流行し、社会全体に不安が広がり始めた。 「区民として声を届けたいけど、何をしたらいいのかわからないという時期でした。ママインターンがどういうものかもよくわかっていませんでしたが、思い切って応募したんです」 区議である本目さんからすると、ママインターンのチャットは子育てする女性たちの本音や困りごとの宝庫である。 「コロナ禍の行動制限が始まったころ、公園の複合遊具(滑り台やブランコ、ジャングルジムなどを組み合わせた遊具)が一時期使用禁止になりました。『みんなのところはどう?』とか『解除された?』とか聞くと、返事が返ってくる。『ゾウさんの滑り台がまだ閉鎖されてるんですけど』という連絡がきたので、区の担当課に確認したら『間違いでした』ということもありました。小さいことですが、子どもにとっては滑り台一個あるのとないのとでは全然違うので」