「見切り発車」の後発地震注意情報 新情報への依存度を下げることが真の巨大地震対策だ
北海道・東北沖の日本海溝・千島海溝沿いで発生することが危惧されているマグニチュード(M)9クラスの巨大地震。想定されている甚大な被害を減らすため、政府は一定規模(M7以上)の地震が起きた時にさらに規模の大きな地震(後発地震)に注意するよう呼びかける「北海道・三陸沖後発地震注意情報」(以下「情報」)の運用を16日正午から開始した。 しかし、この「情報」は地震学にあっと驚くような新たな発見や進展があったから新設されたわけではない。過去約100年間に世界中で発生した地震事例を当てはめたに過ぎず、今回の対象領域以外でも同じようなことがいえる代物だ。「情報」というしくみを導入することありきで、そのための根拠を探したようにも映る。課題も多く、「見切り発車」の感は否めない。(文:ジャーナリスト・飯田和樹)
ツイッターで実施された気象庁のクイズ結果は?
11月下旬、気象庁公式のアカウント「気象庁防災情報」が「#地震クイズ」と称して次のようなツイートを投稿した。 「日本海溝・千島海溝沿いの想定震源域及びその周辺でM7.0以上の地震が発生した場合に発表する『北海道・三陸沖後発地震注意情報』の運用を12月16日から始めます。この地域で、M7.0以上の地震の発生後1週間以内にM8.0以上の大きな地震はどのくらいの割合で発生するでしょうか」 「A ほぼ確実に発生する」「B 約半分」「C 約10回に1回」「D 約100回に1回」 1578票の回答があり、最も多かった答えは「A」で全体の37%。「B」が24%、「D」が21%、「C」が18%と続いた。ちなみに正解は選択肢の中では、最も発生確率が低い「D」の約100回に1回。多くの回答者が、まんまと出題者にだまされた格好だ。 クイズであれば「間違えたー」で済むかもしれないが、実際に「情報」が発表された時にこのような誤った認識だと、どのような事態が起きるだろうか。ツイッター上のクイズ結果だけで「情報」の善し悪しが判断できるわけではないが、現状の課題を探るのに貴重なデータでもあるので、これを使って少しだけ頭の体操をしてみたい。
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