異国の店主と土地の味/韓国料理店『韓国料理 慶美』
各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の外国料理店の店主を、 料理家の土井光さんと巡るコラム。
土井光(以下、土井) 都内には何店舗も韓国料理店があり、韓国料理は日本人にとても馴染みがありますが、こちらのお店ではどういったメニューが食べられるのでしょう? 食材をふんだんに使い、豪快でありながら丁寧に作られているお料理。お母さんの笑顔で美味しいお料理と焼肉を頬張るのはなによりの贅沢!
徐美慶さん(以下、徐) 私のお店では、サムギョプサルやキムチなど日本人の方が韓国料理と言われて思い浮かべるようなメニューはもちろん、鴨肉の塩焼きなどの本場で親しまれているメニューも揃えているのですが、それらを宮廷料理式の伝統的な調理法で作っているのが特徴です。宮廷料理というのは、朝鮮王朝時代に宮中で食べられていた伝統料理のことで、食材本来のおいしさを味わえる素朴な味付けなんです。
土井 どれもしっかり味付けされているけど、優しくて品のある味わいで体によさそうですね。
徐 韓国料理はお肉を頼むと野菜も一緒についてくるのが基本なので、バランスよく栄養も摂れて健康的ですよ。サムギョプサルにもサンチュがついてくるでしょう。
土井 徐さんのお肌がツルツルなのも、きっと韓国の食文化のおかげですね!
徐 あら嬉しい! でも、私は1991年に20代で来日して、もう32年も経つから日本に住んでいる時間の方が長いんですよ。当初は今ほど韓国が日本で受け入れられていなくて、悲しい思いをしたこともありました。でも、今ではすっかり日本が私のホームです。韓国の実家に遊びに行っても、すぐ日本に帰りたくなっちゃうくらい(笑)。
土井 韓国のあらゆる文化に日本人が虜になっている今の時代とは違って、いろいろご苦労があったんですね……。それでも来日されたきっかけはなんだったんですか?
徐 日本に住んでいる知り合いが歌舞伎町でオープンした韓国料理屋を手伝うためでした。そのお店には3年ほど勤めて、そのあとに紹介してもらった溜池山王の焼肉屋に13年ほど勤めて、徐々に日本語を覚えていきましたね。
土井 その当時から、いつかは自分で韓国料理店をやりたいという目標を持たれていたんですか?