山梨を“伝える”インタウンデザイナー土屋誠 “ハタフェス”やワイナリーをブランディング
2016年から山梨県富士吉田市で毎年開催されるハタオリマチフェスティバル、通称“ハタフェス”。織物産業に光が当たる産地観光の成功例としても注目を集める。今年は10月19~20日に開かれ、過去最高の2万4000人が訪れた。その総合プロデュースを任され、チームづくりや骨格となるデザイン、出店者の選定、運営などを市役所と連携して行っているのが山梨県韮崎市を拠点に活動するBEEK DESIGNの土屋誠代表だ。2013年に山梨にUターンして「やまなしの人や暮らしを伝える」をコンセプトに活動し、山梨をアップデートし続けている。 【画像】山梨を“伝える”インタウンデザイナー土屋誠 “ハタフェス”やワイナリーをブランディング
自腹刊行のフリーペーパー「BEEK」からローカルの仕事が広がる
土屋代表は東京で9年間、編集者やデザイナー、アートディレクターとして働き、13年に山梨にUターンした。「もともと山梨に戻るつもりで、10年に東京で独立した後は山梨の仕事も手掛けていた」と振り返る。山梨でまず始めたのは「やまなしの人や暮らしを伝える」をコンセプトにしたフリーペーパー「BEEK」の創刊だ。「まずは僕自身が山梨の今を知るために始めた。楽しく山梨を知ろうと毎号テーマを設けて会いたい人に会いに行き、写真撮影から原稿の執筆、レイアウトデザインまで全部ひとりで行った」。東京で覚えた雑誌編集やデザインのスキルが役立った。最初は5000~6000部を発行し、現在1万部を発行する。
「半年に1回発行して4号出した頃には仕事の9割が山梨の案件になっていた」。Uターン直後は95%が東京の仕事だったというから、山梨の今を伝えたいという想いが形になった「BEEK」を通じてローカルの仕事が舞い込むようになった。「広告なしの自腹で始めた『BEEK』の対価はお金ではなく、人との出会いやつながりだった」。
身近にあるいいものを知って使う。その暮らしが続くことが「いい暮らし」
土屋代表は自身をデザイナーとは名乗らない。「朝日広告賞を受賞して東京っぽさを携えデザイナーとして山梨に帰ってきた。でも機織りやワインなどモノ作りはもちろん売るところまでを考えて取り組む人を見ていると彼らこそクリエイティブだと感じた。そして自分はデザインの本質がわかっていなかったと気づいた。それ以降デザイナーとは名乗れないと感じ、自己紹介を求められると『伝える仕事をしている』と答えるようになった」という。