山梨を“伝える”インタウンデザイナー土屋誠 “ハタフェス”やワイナリーをブランディング
地場産業がさかんな山梨に暮らしながら仕事をすることは「東京で仕事をしていたときよりもハードルが高いが、だからこそやりがいがある」という。「土地に関わるのは、その歴史に関わることでもあり、何かを左右しかねないから責任感が必要になる。そして、デザインはもちろん人を見る目を養う必要がある。何より、楽しみながら暮らせれば自分にできることや役に立ちたいと思うことが見つかる。だからこそスキルも磨かねばと思うし、東京にいる頃よりも成長できていると感じる」と話す。
土屋代表の手掛けるプロジェクトは関わり続ける仕事が多い。甲州市塩山の福生里集落の「98wines」もその一つで、土屋代表はブランディング、ロゴや建物のサインなどを担当した。その「98wines」は2024年、「ワールズ・ベスト・ヴィンヤード 2024」で49位にランクインした。「日本のワイナリーで唯一トップ50に入った。建築家やランドスケープをデザインする人、施工を行う人など、関わる皆で出し合ったアイデアで化学反応を起こせたように感じる」。選出理由は「ワインで土地文化を表現したことが評価されたのではないか」と分析する。「風景として根付く新しいものを作れたように感じる。昔から多い石垣を活用しながら、自然に寄り添ったものができたのではないか」。
地場産業継続の先に見据えること
地場産業は担い手不足が叫ばれて久しいが、仮に担い手を獲得した先に何を見据えればいいのだろうか。「楽しく暮らす人が増えること。地場産業に携わりながら自分らしい暮らしができると思ってもらえる風土が育つことではないか」という。「山梨に暮らすようになって豊かさを感じている。生活に組み込める気持ちいいモノが当たり前にあるというか。僕の場合は温泉がそのひとつ」と土屋代表はいう。「僕は山梨で自分らしい暮らしができている。消費を含めて地場にあるもので暮らしができているから。僕はあるものをそのまま使って遊ぶスケーターカルチャーが好きで、地場産業もその感覚に近いと感じている。ある環境を大事にして生かすことがこれから大事になってくるのではないか」。