豪快TKO勝利の“激闘王“八重樫が引退を賭けて狙うは「記憶に残る4階級制覇」
ボクシングの元3階級王者の“激闘王”八重樫東(36、大橋)が8日、後楽園ホールで、タイのスーパーフライ級8位、サハパップ・プノップ(23、タイ)とノンタイトルのスーパーフライ級10回戦を行い2回2分25秒にTKO勝利した。八重樫はWBC世界スーパーフライ級王者のシーサケット・ソールンビサイ(32、タイ)との世界戦が3度も幻に終わるハプニングがあり約8か月のブランクを作ったが、迫力満点のコンビネーションブローで3度のダウンを奪い健在ぶりをアピール。「記憶に残る4階級制覇」を宣言した。陣営は年内には4階級制覇のチャンスを作りたい考えだ。
8か月ぶりのリングでの恐怖心
電光石火のコンビネーションブローからの豪快な右の一発。格下のタイ人は腰を落とした。カウント8で立ち上がってきたが、八重樫は許さない。お次はボディの連打から右のアッパーで仕留める美しいコンビネーション。2度目のダウンである。 23歳のタイ人は、ゾンビのごとく再度、立ってきたが、八重樫が左のボデイアッパーから右のアッパーを突き上げると「うっ」と鈍い声を残しうつ伏せになってキャンバスに倒れこんだ。リングに駆け込んだトレーナーが慌てて仰向けにして腹部に氷嚢をあてたが、腹を抱えながらしばらく悶絶が続くほどの強烈なダメージだった。 「まだボクシング人生を続けられるので良かった」 36歳の元王者は“人生”という言葉を使って勝利を表現した。 昨年8月、向井寛史とのサバイバルマッチを制して以来、約8か月ぶりのリング。 「怖かったですね。勝たなければならないリング。しっかりした内容も見せないといけない。そういう試合ってチャレンジするよりも恐怖心が大きい」 相手は八重樫にとって不足のあるレベルだったが「怖い」の感情が先に立った。負ければ引退を余儀なくされ、大好きなボクシングを奪われる恐怖心である。そしてスーパーフライ級という4階級目の壁。恐怖心を振り払うために八重樫が選択した道は、「年齢に応じて練習量を落とすのではなく、逆に質も量も上げる」という過酷なノルマ。 大橋秀行会長が驚く。 「練習量が凄い。計量の前日もウエイト、ロードワークもやっている。こんな練習量は見たことがない。昔は年を取ると練習量を減らした。私なんか現役時代には27歳で減らしていたから」 実は、この8か月の間に3度も世界戦が幻に終わっていた。大橋会長は、八重樫もやられた“ロマゴン”を倒して一躍、スターダムにのし上がったシーサケットとの世界戦実現に動いていた。2人は八重樫がまだ世界のベルトを腰に巻いていない2009年3月に対戦しており、八重樫が3ラウンドにTKO勝利している。 「向こうも(八重樫戦の負けに)納得がいかないみたいでね」(大橋会長)。昨年の10月にタイ、今年3月に東京、そしてこの4月に米国ロスと、3度、時間と場所まで決めて世界戦交渉は決定寸前まで進んだが、4月26日に米国ロスで、シーサケットと同級1位のファン・フランシスコ・エストラーダ(28、メキシコ)との指名試合が行われることになって、八重樫の4階級制覇挑戦は消滅した。