レースが好きなオーナーと、レーシングドライバーが所有したファミリア|マツダ戦記|1982年式 マツダ ファミリア 3ドアハッチバック 1500 XG
【1982年式 マツダ ファミリア 3ドアハッチバック 1500 XG】 1963年に初代が誕生し、2003年にアクセラにバトンを託して乗用モデルの生産が終了したファミリア。40年間、9世代に渡る歴史の中で、「最高傑作」と言われるのが80年に登場した5代目のBDで、新時代の幕開けを告げる大きな変革をもたらした。 最大の革新は駆動方式。 プラットフォームから新開発し、ファミリア初のFFレイアウトとなったのだ。加えて特徴的なのがリアサスペンションで、「SS(セルフ・スタビライジング)サスペンション」と名付けられたそれにより、卓越した操縦安定性を手に入れるとともにシャープなハンドリングを実現している。また、エッジの効いた若々しいデザインとなったエクステリアも見どころだが、特徴は室内。とくに後席は分割可倒が可能なほか、リクライニング機構も備えており、機能性と実用性、快適性は群を抜いていた。 このように大きく進化したBDファミリアは、記念すべき第1回カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど国内外で高く評価され、国内販売ではカローラやサニーを抑えて月間ナンバー1を幾度も獲得。若者を中心に大ヒットモデルとなり、大旋風を巻き起こした。 さて話は変わって、唐突だが「高橋徹」という名前をご存じだろうか。80年代初頭に活躍したレーシングドライバーで、弱冠18歳(79年)でデビューを果たしたこの若者はすぐに頭角を表し、わずか3年余りで国内トップカテゴリーの全日本F2選手権と富士GC(グランチャンピオンレース)にまで駆け上がった。将来を嘱望されたドライバーだったのだ。 そんな高橋は83年、ヒーローズレーシングからF2と富士GCの全レースに参戦。F2開幕戦では、最終ラップで星野一義をかわして中嶋悟に次ぐ2位でチェッカーを受けるという衝撃的なデビューレースを飾った。この結果は高橋自身の自信になった反面、呪縛ともなっていく。F2の前半戦をランキング5位で終えるという活躍を見せるが、なかなか勝てないことに焦りも感じていた。 【画像18枚】ファミリア旋風を巻き起こした最高傑作の呼び声高き5代目。写真では確認できないかもしれないが、走行距離は1万6984㎞を示している 若くして散ったレーシングドライバーが所有していたファミリア そして83年10月23日、富士GC最終戦「富士マスターズ250キロレース」。高橋はトップを走る星野を猛追するが、2周目の最終コーナー立ち上がりでスピン。そのままマシンは宙を舞い観客席のフェンスに激突し、高橋は帰らぬ人となった……。 なぜ高橋徹というレーシングドライバーを語ったのかというと、今回の撮影車両は、その高橋徹が所有していた個体そのものだからだ。高橋の死後、ファミリアは広島県の実家に引き取られて26年間保管されており、その後ファンに譲られ、さらに千葉県の中古車販売店へと渡った。一方、この個体のオーナーは当時からレースが好きで、レース写真を撮っていたこともあり、高橋の実兄と知り合った。そして約3年前、高橋の33回忌があることを実兄から伝えられ、それを機にオーナーはこの個体を引き取り、富士スピードウェイや高橋が生前住んでいたアパート、実家へと連れて行った。「徹さんの死後、何もしてあげられなかったので、供養と思って……」とオーナー。目的を果たしたこの個体は「公的な団体や熱烈なファンの方に譲って、いつまでも大切に保管していただきたいです」と語った。最後に、この事故で亡くなられた高橋徹さんと観客の方のご冥福をお祈りいたします。 「このクルマを広島の実家まで連れて行って、ご家族にはとても喜んでもらえました」と語る。だが、購入時はエンジンが不調で、走れる状態にするまでには苦労したそう。だが、「このクルマを引き取ってよかった。 徹さんのために何かしてあげたかったから」と目を細めるオーナーの表情が印象的だった。 主要諸元 Specificationsファミリア 3ドアハッチバック 1500 XG 全長×全幅×全高(㎜) 3955×1630×1375ホイールベース(㎜) 2365トレッド前/後(㎜) 1390/1395車両重量(㎏) 825エンジン型式 E5型エンジン種類 直列4気筒SOHC総排気量(cc) 1490ボア×ストローク(㎜) 77.0×80.0圧縮比 9.0:1最高出力(ps/rpm) 85/5500最大トルク(㎏-m/rpm) 12.3/3500変速比 1速2.841/2速1.541/3速1.000/後退2.400最終減速比 3.631ステアリング ラック&ピニオンサスペンション ストラット(前後とも)ブレーキ前 / 後 ディスク/リーディング&トレーリングタイヤ 175/70SR13(前後とも)発売当時価格 111.6万円
Nosweb 編集部
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