私立高生徒、経済的理由の中退が増加…全国私教連
一方、経済的理由で私立高校を中退した生徒は、9都県13校43人。前年より2県5校減少したものの、人数では前年比2倍弱増えた前年より、さらに13人増加している。調査対象生徒に占める割合は0.015%で、前年より0.005ポイント上昇した。
学校からは、「親を助けたいという思いから退学して仕事に就いている」(岩手)、「授業以外の費用負担が重く、弟妹らの将来の進学費用準備も必要なことから退学・転学を決断」(東京)などの報告があった。
また、アンケート調査の結果によると、「退学、学費滞納に至らないが学費納入に苦労している生徒の実態」として、「授業料補助では不足で学費や生活費捻出のためにアルバイトをする生徒がいる」「経済的な理由から進路希望の変更を余儀なくされる生徒がいる」「学費負担が家庭内に不和または兄弟姉妹の進学先制限の原因化している」を選択する回答が少なくなかった。
「その他」として、「保護者が所得要件を超えないよう働き方を制限しているケースも多々ある」(宮城)、「授業料は支払えても、施設設備費や修学旅行積立などの諸経費の滞納が多い」(愛知)などの記述もあったという。国に向けた高等学校等就学支援金の制度拡充要望では、「所得制限(年収910万円未満世帯対象)の撤廃」が特に多かった。
このほか、私立中学校で3か月以上学費を滞納した生徒は15都道府県45校に94人。調査対象者に占める割合は0.15%。前年より学校数、滞納生徒数とも減少しているが、調査した生徒数に占める割合は前年比0.01ポイント増となった。6か月以上の学費滞納生徒は17校26人。前年の40人から減少し、コロナ禍前の2019年と同水準となった。
全国私教連では、国に対して「高等学校等就学支援金制度の支給対象を年収910万円未満世帯までにすること」「私立高校の入学金補助制度を創設すること」、学校に対して「施設設備費等授業料以外の学納金を39万6,000円まで早急に授業料に振り替えること」などを要求。
国の高等学校等就学支援金制度では、年収590万円未満に年間39万6,000円、年収910万円未満に年間11万8,800円の授業料支援が受けられるが、年収590万円と910万円の所得制限の「ガケ」が生まれていることから、自治体に対しては「ガケ」の解消に向けて年収910万円未満世帯までを対象とした自治体単独の加算制度を作ることなどを求めている。
リセマム 奥山直美