【魚ビジネス】鮮魚チェーン「角上魚類」の快進撃を支える「お魚コンシェルジュ」としての役割 「魚は対面販売が一番売れる」と言われるのはなぜか
街の魚屋さんが減り続け、魚といえばスーパーで切り身やパックに入ったものを購入するという生活習慣が根づきつつあるが、魚を置いて店員がお店と相対しながら販売をする「対面販売」も健在だ。 【写真】鮮魚チェーン「角上魚類」。2024年大晦日、午前3時に店の前は大行列。店内も多くの人で賑わう
そうした販売スタイルの店舗展開で、16年連続で増収を達成、直近6年間で売上高が約100億円の伸びをみせているのが、関東・信越地域に店舗を展開する大手鮮魚チェーン「角上魚類(かくじょうぎょるい)」だ。なぜいま、「鮮魚の対面販売」が再注目されるのか。東京海洋大学非常勤講師で水産物の流通にも詳しい、おいしい魚の専門家・ながさき一生さんの著書『魚ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
昔の魚屋が担っていた「お魚コンシェルジュ」の役割
街にスーパーが台頭してくる前の時代。全国の商店街には魚屋が建ち並び、その頃は魚が売れていました。 では、その頃と今では何が違うのでしょうか。また、実は人件費を掛けられれば魚屋の売上は伸びるのですが、それはなぜなのでしょうか。 まず、商店街の魚屋と角上魚類にはある共通点があります。それは、対面販売を行なっているという点です。 街の魚屋は、狭い間口の店先に魚を並べ、お客と話をしながら売る対面販売が基本となっていました。そして、やってきたお客に「今日は何がおすすめか」「どのように食べると美味しくいただけるか」などの話をしていたのです。今風の言葉で表現するなら、「お魚コンシェルジュ」の役割を果たしていたのが昔の魚屋でした。
しかし、スーパーが台頭してくると街から魚屋が消え、「お魚コンシェルジュ」がいなくなっていきました。この頃から魚の消費がどんどん減って魚離れが進んでいきます。 実は、この「お魚コンシェルジュ」は、鮮魚の流通にとって非常に大事な役割を果たしていたのです。どういうことかをお話をしましょう。 魚の生産方法は、今も天然から魚を漁獲する方法が半分以上となっています。そうすると、毎日入荷状況が変わってきます。 今日安く仕入れた魚が明日高くなるかもしれませんし、違う魚が安く入荷してくるかもしれません。また、普段見ない魚が入荷してくることもあるでしょう。 さらに、魚は種類が豊富で、日本で主に食べられている魚種だけでも30種類は超え、時々食べるものも含めると500種類以上を超えてきます。さらには、加工品も様々なため、「お魚コンシェルジュ」に必要な魚全般の知識は膨大なものとなります。
【関連記事】
- 【“日本人の魚離れ”もどこ吹く風!】快進撃を続ける鮮魚チェーン「角上魚類」 躍進を支える「あえて人件費を掛ける」ビジネスモデルの秘密
- 魚料理を扱う飲食店の“良し悪し”を見分けるポイント 「アラ汁」を出す店では値段の割に美味しい魚が食べられるカラクリ
- 「上京して頼む人が少なくてびっくり!」 長野県民にとっては「サラダ軍艦」が回転寿司の大定番、人気化した背景には「かっぱ寿司」の創業と魚の流通事情があった
- 【世界の魚介類の半数が養殖】魚食ブームを支える「養殖ビジネス」の最前線 「海水魚を養殖できる」日本の強みと過熱する「陸上養殖」の課題
- 【いまや回転寿司で人気No.1】「生で食べられるサーモン」が鮭の生食文化のなかった日本に根付いた経緯 日本企業も養殖事業に続々参入